


【腐り切った現代社会へ、50年以上前からの贈り物!】『しばてん』
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田島征三 /作 32P 偕成社
【この不条理を僕らはどう受け止めるべきか?】
むかし土佐に住んでいたとされる、すもう好きの妖怪「しばてん」。みなしごの男の子・たろうは、すもう大会で、あらゆる人を投げ飛ばしたことから、しばてんの生まれかわりではないかと疑われてしまいました。
そして、村の長者の「こんな きみわるい ばけものは、村にゃ おけん。」という言葉に同意した人々によって追いやられ、山奥でひとりで生きるようになります。
月日は流れ、人に会いたくなったたろうが山をおりると、村は日照りによって困窮し、人々は飢えにあえいでいました。そんななか、長者だけが家に米や食べものをたくわえているのを知ったたろうは、長者を投げ飛ばし、人々を飢えから救います。
みんなはふたたびお腹いっぱい食べられるようになり、たろうはまた村に住むようになりました。しかし、騒ぎをききつけた役人がやってきて、長者の米俵をぬすんだのは誰か、と村の人々を問い詰めて……。
ページごとに異なる色使いで、大胆に描かれた絵からは、たろうや村の人々のほとばしる感情があふれます。人間の業について、深く考えさせられる一冊です。
(出版社の紹介文から)
【丈太郎のひとりごと】
いつもはあらすじや特徴など、僕自身が書いて皆さんに紹介していますが、出版社(偕成社)の書いた紹介文がとても的を得たものであったので、そのまま掲載することにしました。
僕が皆さんに伝えたいことは、この本の「あらすじ」ではなく「この絵本とどう向き合っていくべきか?」と言うことです。
この不条理なお話を描いたのは、80才半ばを超えた今でも創作意欲が留まるどころが、よりアクティブに、絵本だけではなく、あらゆる手法、素材で芸術を生み出している、絵本作家というジャンルでは括りきれない「芸術家」と紹介した方が適切と思われる田島征三。
若き20代の学生時代に手刷りで創った最初の絵本がこの『しばてん』。それから『ふるやのもり』(福音館書店)という昔話の絵を手掛けたのが、メジャー(一般流通すると言うこと)デビュー作。こちらも当時は「こんな汚らしい絵はなんだ!」などと、当時は批判されたらしい。
そして、メジャー2作目がこの『しばてん』である。
「絵本界の重鎮」として、児童書業界からは一目置かれているうえ、大作家過ぎて恐れ多く近寄れないと言う人もいるだろうけど、そんな田島征三のことを僕は「征三さん」と気安く呼んでいる。
僕が「征三さん、あのさぁ〜」なんて話をしているところ目撃した人からは「なんて失礼な奴なんだ!」と思われたり、ビックリしたりされるけど、僕にとっては幼少時から知っている「お父さん(メルヘンハウス創業者の三輪哲)の変わった友達の一人」でしかないのである。なので、今更祭り上げるような接し方はしない。
そんな35才も離れた若造(と言っても50才、、、。)にも、征三さんは僕の話に真剣に耳を傾けて同じ目線で話をしてくれる。だから僕もお構いなしに新刊が出ると連絡して「作品は良いけど帯に書いてあることが気に食わない!」などと平気で言ってしまうのだ。
正直、幼き頃の僕にはこの『しばてん』という絵本に、そんな思い入れのある絵本ではなかった。「何かおどろおどろしい怖い絵本」と言うぐらいの印象であった。
しかし、ここ10年ぐらいでやっとこの絵本の凄さに気付いたのだ!もう50年以上前1971年に描かれたこの絵本は「今」でも生きている。いや「今」の陳腐した現代社会の闇を予言するかのように描いているではないか!
『しばてん』には「あとがき」があり、それは若き田島征三の決意表明のように思う。そんな「あとがき」の一文にこう記してある。
”ぼくがひそかに期待していることは、子どもたちが、その成長の過程で、あるいは青年になってからでも、絵本『しばてん』が、かれらの心の中で発酵して、「ふっ」と、「あの絵本の作者がいおうとしたことは、このことだったのか!」と、心に沈んでくれることです。”
そう、まさに僕がここ10年ぐらいで感じたことが書いてあるではないか!
この心に沈んだことを僕はどう表現すべきか?とても悩んだ。悩んだ挙句、僕の中でひとつの答えが見つかった。
「この『しばてん』を子どもたちに手渡していくこと。」
正直、今までは自信がなかった。この『しばてん』に対して深く問われたらどうしようと怯えていた。それは後の征三さんの『とべバッタ』(偕成社)に描かれている臆病なバッタのようだったから。だけど、今なら僕はどんな天敵が現れようと、自信を持って『しばてん』を責任持って子どもたちに手渡せる。
本当に大人になると不条理なことが多い。人間関係も「ウィンウィンな関係で、、、。」なんて互いの利害関係がマッチングする時だけの軽いものや、今の日本は一部の政治家や大企業上役や資産家など「お偉いさん」たちに有利になるようなシステムであり、その「お偉いさん」たちの不正や不祥事も正しく裁かれることなく、いつの間にかフェードアウトしていく。そして、それを「善し」としている僕を含めた一般市民の罪も大きい。
本当にこのままで良いのか?征三さんの投げかけに、僕らはどう応えていくべきであろう?僕ら大人は今一度、自分の足元を見つめ直して、より人間らしく正しく生きていくべきではないだろうか?
僕はこの『しばてん』を全力で子どもたちに手渡していく。さあ、皆さんはどうしますか?
Punks Not Dead!
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