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【みんな大好き!】「長新太の絵本の復刊&新作セット」
¥3,630
★『にゅーっ でたよでたよ』長新太/作 荒井良二/絵 24P 絵本塾出版 ★『ちへいせんのみえるところ』長 新太/作 32P 絵本塾出版 【長新太の復刊&新刊セット!】 『にゅーっ でたよでたよ』は、長新太の『ちへいせんのみえるところ』を読んだ荒井良二が「この絵本に出会えていなかったら、ぼくは絵本を作っていないと思う。」というぐらいの大切な絵本です。長新太が生前に残したラフに絵を描くというのは光栄なことだと思いますが、プレッシャーも大きかったはずです。 しかし、しっかりと荒井良二風にアレンジされていて、随所に長新太に対する敬愛を感じることが出来ます。 『ちへいせんのみえるところ』は、ここまで絵も文章も削ぎ落として繰り返しだけで絵本として成立している傑作の待望の新刊です。こんな絵本がもっと多くの子どもたちに手渡っていけば、きっと良い世の中になっていくんじゃないかな?って思ったりもします。 2作品の詳細は各商品ページにてご確認下さい。
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【夢のコラボレーション絵本が誕生!】『にゅーっ でたよでたよ』
¥1,650
長新太/作 荒井良二/絵 24P 絵本塾出版 【奇想天外なことが繰り返される無限ループの中毒性アリ!】 大きなかばが画面一面に書かれています。そこには一言だけ「かばから」とあるだけ。そしてページをめくってみると、そこには「かばん」を鼻にぶら下げたかばがいます。 「かばんが にゅーっ ぶら ぶら ぶら」 綺麗なはなが画面一面に書かれています。そこには一言だけ「はなから」とあるだけ。そしてページをめくってみると、そこにははな(花)から(鼻)が飛び出ています。 「はなが にゅーっ くんくん くんくん いいにおい」 くもからくもが、はしからはしが、あめからあめがetc...。こうして次々に登場していきます。 長新太が生前に残した未発表のラフに、荒井良二が絵を描いた夢のコラボレーション絵本。 【丈太郎のひとりごと】 つい先日に復刊された長新太の『ちへいせんのみえるところ』(絵本塾出版) https://shop.meruhenhouse.com/items/104318385 の帯には、荒井良二がこう書いています。 「この絵本に出会えていなかったら、ぼくは絵本を作っていないと思う。」 そこまで尊敬していた荒井良二にとっては今作は夢のような制作だったと思います。併せて大きなプレッシャーも抱えていたことでしょう。 しかし、そこは長新太への弊愛を強く感じます。それは絵は確かに荒井良二そのものですが、しっかりと長新太のテキストを捉え自分のものにしています。長新太が今作においてどれぐらいのラフを残したのかは興味深いところですが、色の配色などはやはり長新太なのです。 長新太の絵本については多くを語ることは野暮なことだと思うので、これ以上の説明はいらないかと思いますが、長新太のスタンスはそのままに、荒井良二の絵によって蘇った長新太」を感じることが出来ます! 長新太ファンはもちろんのこと、荒井良二ファンも、そして全く初見の赤ちゃんからシニア層まで楽しめることは保証します。 「そうそう、これで良いんだよ!絵本ってこれで良いんだよ!」 僕は何度も読み返して思ったのでした。
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【限定30冊】《宛名入りサイン本」》『かたちえほん おはなさん』
¥1,760
予約商品
わたなべ ちなつ/作 22P 小学館 【本は四角でなければいけないの?】 丘に咲く一輪の花。このおはなさんが想像する楽しい世界ってなに?空を飛ぶ?友達をつくる?たとえ失敗したって、落ち着いて深呼吸すれば大丈夫。 どのページを開いても、常に前後のページと絵がつながる。これまでにないユニークな姿・かたち・構造をもった絵本。本を開いた形もお話の内容とリンクします。 (以上、小学館ホームページから引用) 【丈太郎のひとりごと】 僕がメルヘンハウスに入社したのは2014年、今から11年前のことです。ある日、1通のメールがきました。差出人は美大の 大学院に通う学生からでした。内容は「今度、絵本を出版することになったので展示をさせて欲しい。」とのこと。 旧店舗のギャラリーは、メルヘンハウス企画がほとんどで、その合間にレンタルもしていました。「ではメルヘンハウスに来て頂いて、どのような内容の展示なのか話を聞かせてください。」と返信し、後日その学生が沢山の資料を抱えながらやって来ました。 その学生が後に絵本作家デビューする「わたなべ ちなつ」さんでした。 彼女は「かがみの絵本」シリーズ(福音館書店)のまだ製本されていない、『ふしぎな にじ』のダミーを持ってきて熱意を持って、やりたいことを語ってくれました。話を聞いて「これは面白そうだな!」と直感で思いワクワクしました。 しかし、その展示内容の大掛かりさから「これは相当な費用がかかるはずだ。」と思い、通常レンタルの場合はレンタル料を頂いていたのですが、彼女が学生であり、そして熱意に応えないわけにはいかないと思い、レンタル料は頂かないことにしました。 そして、搬入日は彼女の家族総出の大変なものでした。メインは等身大の『ふしぎな にじ』のオブジェクト。実際に子どもから大人まで、数ページめくることが出来て、しかもその中の「かがみ」に自身が写ることが出来るものでした。それ以外は細かなスケッチやらダミーなどでした。 そして、『ふしぎな にじ』と『きょうの おやつは』が出版されて、約20日後に展示はスタートしました。無名の絵本作家デビューしたばかりの展示に人が来るか心配でしたが、彼女を知らなくとも、子どもも大人も等身大の『ふしぎな にじ』に入って自分が「かがみ」に写っていることに大興奮!大盛況のうちに終わりました。 しかし、この2冊は当時の絵本相場と比較して「これで1500円(税抜)は高いなぁ。」と、「商品」としてはいかがなものか?と思っていました。 しばらくは視覚体験の絵本ということもあり「科学のコーナー」に置いたり「しかけ絵本」のコーナーに置いたりしてましたが、正直あまり売れ行きは良くありませんでした。 しばらくして、僕のプライベートでは翌年の6月に息子が生まれ、色々な絵本を読んだり、おもちゃで遊んだりしていました。息子が機嫌が悪くて泣いた時はいつも家の「かがみ」に息子を写すように見せると泣き止んで「かがみの中の自分」に必死に触ろうとしました。 そこで「もしかしたら!」と思いつき、『ふしぎな にじ』を見せました。 そしたら、家にある「かがみ」同様、自分が写っていることを不思議に思ったのか、ヨダレだらけの手で『ふしぎな にじ』を触ることをとても好みました。 息子からヒントを得た僕は、次の日から『ふしぎな にじ』と『きょうの おやつは』(共に福音館書店)を「赤ちゃんコーナー」に移動させて、自分の実体験を元にお客様に説明したら、これがお当たり!瞬く間に『ふしぎな にじ』と『きょうの おやつは』が爆発的に売れ出しました。 購入されたお客様は、我が子の反応が良くて、しかもデザイン性も高い!そして、今までに見たことがない絵本として「出産祝い」の定番にするお客様も沢山いらっしゃいました。 その後の「かがみの絵本」シリーズが大ブレイクしたのは、知っている方も多いと思います。 そして、今回の『かたちえほん おはなさん』は、以前の「しかけ絵本」とは全く異なるもので、これまたビックリしたのですが、形も変形のため「本棚に置きにくいなぁ」と扱い方に頭を悩ませました。 しかし、文章がとてもシンプルで想像力が掻き立てられる「余白」が十分にあり、自分の心がどんどん自由にポジティブに解放されていくようでした。それは考え抜かれた「しかけ」のクオリティの高さが読み手に「時間をつくる」アシストをしているからだと思います。 彼女の作品は「しかけ」ばかりが注目されがちですが、画力も相当なもの。「しかけ」などなくとも、普通の絵本としても十分に見応えのある絵を描いています。 子どもは勿論のこと、大人の心にも響くただの「しかけ絵本」ではありません。それはこの絵本を開けばきっとわかるはず! ギフトにもオススメです!
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【毎回、新作が傑作!】『じゃないものさがし』
¥1,540
中垣ゆたか/作 32P ポプラ社 【とてもシンプルだけども遊び心満載の間違い探し!】 「ぼうし「じゃないもの」は、どれだ?」 「めがね「じゃないもの」は、どれだ?」 「タイヤ「じゃないもの」は、どれだ?」 こんな感じで、約20〜30のイラストから「じゃないもの」を探していきます。「じゃないもの」が2つの時もあるし、3つの時、4つの時と、そのシチュエーションによって「じゃないもの」の数も変わっていきます。 たまにページ全体に描かれた絵の中から「じゃないもの」を見つけ出すのは至難の業です。 緻密にコミカルに、そしてポップにカラフルで描かれた絵での「じゃないもの」は何度読んでも楽しめます! 【丈太郎のひとりごと】 絵本作家デビューから10年ちょっとで、ナント!50作品以上も絵本を描いている中垣ゆたかさん。個人的にも親しく、毎回新作が出る度に送ってきてくれます。 この絵本も家のポストを開けてレターパックが入っていたら「ああ、中垣さんからだな!」とニンマリして、早速読んでみて直ぐに電話します。 「今回も最高じゃん!」と言うと「そうなんですよ!毎回最高傑作なんですよ!」と長電話が始まるのです。その電話の中での制作秘話や、どうやって子どもたちに届けようか?など、色々真剣な話をしながら「あっ、そう言えばあの映画観た?」とか脱線していくのが毎回のお決まりごと。 「仲が良いから!」とエコひいきすることなく、傑作です!毎回緻密にページ全体を描き込むスタイルから、個々のキャラクターが際立つように、今まで「ゴチャゴチャしていて見にくい!」と思っていた人へもオススメです!抜き加減と今までと同様描き込むバランスが絶妙です。 このような探し絵(間違い探し)は一回読んで見つけたら終わり!ってことが多いですが、今作は見つけた後でも細部の描き込みなど見どころ満載! 親子で一緒に「じゃないもの」探しをしたら、きっと楽しい!というか大人は子どもに勝つことが出来るか? もちろん、子どもだけでも楽しめます!長時間のドライブ、病院の待ち時間などには持ってこい!の絵本です。
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【読んだら何故かスキップをしたくなる⁉︎そして、心が軽やかに。】『テーブルのしたになにがいる?』
¥1,980
アラン・アールバーグ/作 ブルース・イングマン/絵 とたにようこ/訳 40P 徳間書店 【テーブルの下に続々と生き物たちが現れたらどうする?】 あるところにエルシーという名前の女の子がいました。エルシーは猫と犬とパパとママとバンジョーという名前のお兄ちゃんと住んでいて、エルシーはみんなのことが大好きです。 ある朝、パパとバンジョーが外で車を洗っていると、エルシーが家から出てきて2人に大きな声で「テーブルの上でゆで卵が走っていて、テーブルの下にはものすごくでっかい灰色の、なにかがいる!」 みんなで家の中に戻ると、ゆで卵は逃げた後、そしてテーブルの下には象がいました。 と言うわけで、象も一緒にみんなでみんなで車を洗いました。 ママとバンジョーが買い物から帰ってくると、エルシーが家から出てきて2人に大きな声で「テーブルの下に、おっきくて茶色くてぴょんぴょんしたお腹にポケットにがある、なにかがいる!」 みんなで家の中に戻ると、テーブルの下にはカンガルーとカンガルーの赤ちゃんがいました。 と言うわけで、みんなで車に荷物を運びました。 今度エルシーが冷蔵庫の中で見つけたのはペンギンが2匹いました。 そして、みんなでお茶をしながらママがみんなにある提案をしました。それはみんなで海でキャンプをすることでした。と言うわけで、明日の朝早くから海へキャンプに行くことにしました。 海でパパとバンジョーがバーベキューをしていると、エルシーが駆けてきて「テーブルの下に、、、、、。」 ピンクや黄色が背景色として、そこに人や物や生き物たちが軽やかに躍動感溢れる光景を色鮮やかに描かれているため、とても明るい気持ちで次にテーブルの下に現れるのはなんだろう?とページをめくるのがワクワクする絵本です。 【丈太郎のひとりごと】 様々な生き物がテーブルの下に現れるなんとも奇想天外のユーモアたっぷりのお話ですすが、現れて終わるのではなく「と いうわけで、」と次々に場面が展開する楽しさが目一杯に描かれています。 絵も完璧に描写しておらず、良い意味でラフに描かれているため、その効果で軽やかさを感じます。しかし、構図はしっかりとしているので、とても見やすく親しみも感じます。 あり得ないことがテーブルの下で次々と起こる、繰り返されるリズムの気持ち良さが心をワクワクさせ、軽やかなウキウキな気分になってしまい、なんだかスキップをしたくなような絵本です! 実際に僕はお客さんのいないメルヘンハウスで軽くスキップをしてみましたが、子どもの時のようにリズム感良く軽やかにスキップ出来ず、ちょっと落ち込みました、、、。それは誰にも見られたくない光景でした。 さぁ、皆さんもこの絵本を読んで軽やかなスキップに挑戦してみてください!きっと子どもたちには勝てなと思いますが、、、。
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『ほんやくすると』
¥1,760
斉藤倫・うきまる/作 くのまり/絵 32P ブロンズ新社 【「ほんやく」しなくても、分かりあえることがあったりするのです。】 生まれたれの赤ちゃんに犬が自分のしっぽを振る意味を教えます。 ほんやくすると、「とっても うれしい!」ってこと。 泣いている赤ちゃん、お腹がすいた?眠たい?おしっこ?ほんやくすると「おかあさーん!」。 ボロボロになったぬいぐるみ、ほんやくすると「おきにいり!」。 カチカチと響く時計の音、ほんやくすると「いま おんなじ ときを すごしている」。 誕生日の時のろうそくの火、プレゼントの包みが大げさなのは、しとしとと雨の音、それぞれの翻訳があります。 丁寧に選ばれた言葉だけが文として書かれていて、その言葉と一緒に呼吸するように、シンプルに、時には大胆に描かれた細部に至るまで丁寧に描かれた絵から、生命の美しさ、生きる喜びを感じます。 【丈太郎のひとりごと】 メルヘンハウスでも人気の『のせのせ せーの!』(https://shop.meruhenhouse.com/items/84216122)のトリオが描いた、優しく柔らかいお話です。 詩人の斉藤倫さん、絵本作家のうきまるさんが丁寧に紡ぎ出した言葉を、イラストレーターのくのまりさんが丁寧に描く世界観は『のせのせ せーの!』同様、とてもシンプルながらも奥深さを感じます。 犬の言葉が次々と「ほんやく」されていきますが、最初は生まれたばかりの男の子の赤ちゃんの成長し少年になるにつれ「ほんやく」がシンプルになっていきます。 そして、会話となり、やがて言葉がなくても通じ合う少年と犬の関係がとても素晴らしく思います。 僕も犬を飼っていたので、この気持ちがとても分かります。自分が成長していくことにより、犬が言わんとしていることが自然にわかったり、時には的外れな解釈をして怒らせたり、犬と人間の関係を超越した「親友」となっていきました。 少し前までは犬や猫はペットでしたが、今では友であり、親であり、家族の一員なのです。 なんだか僕と犬との様々な思い出が一気に蘇り、今は会うことが出来ない犬を想いセンチメンタルな気分にもなりましたが、きっと向こうの世界でも楽しくやっているだろうと、いつか再会できる日を楽しみにしながら絵本を閉じました。
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【待望の復刊!「長新太」はやはりすごい!】『ちへいせんのみえるところ』
¥1,980
長 新太/作 32P 絵本塾出版 【一画面のみで繰り返される「でました。」だけでこのクオリティ!深読みせずにこの世界観に飛び込んで楽しもう!】 まず目に飛び込んでくるのは画面一面に描かれた草原が広がる地平線です。ページをめくってみると、 「でました。」 と、男の子の顔が草原からひょこりと顔を出しています。次のページをめくってみると、 「でました。」 と、今度は像の顔が草原からひょこりと顔を出しています。次のページをめくってみると、 「でました。」 と、今度は噴火する山が草原から大きく出ています。次のページをめくってみるとetc...。 こうやって、飛行船、ペンギン、クジラ、船などが出ていき最後は、、、。 画面一面に描かれた草原が広がる地平線で繰り広げる「でました。」の数々。描かれている色のトーンが長新太には珍しくトーンが落ち着いてますが、内容は「長新太ワールド」炸裂な絵本です。 【丈太郎のひとりごと】 1978年エイプリル・ミュージック、1998年ビリケン出版より刊行され、しばらく手にすることが出来なかった長新太の名作がこの度めでたく復刊しました。 画面一面に描かれた草原が広がる地平線をベーシックに「でました。」と予期せぬものが沢山登場します。このミニマルな世界観は、まるで音の動きを最小限に抑え、パターン化されたフレーズを反復させる「ミニマル・ミュージック」と呼ばれる現代音楽というジャンルの音楽に、とても似ています。 分かりやすいところで言えば、これはテクノミュージックですね!ループ(繰り返し)される「ドン、ドン、ドン、ドン」と4つ打ちされるバスドラムのうえで同じフレーズが繰り返され、徐々にそのフレーズパターンが変化したり、他のフレーズがフェードインしてきたり、そして中盤のシンプルな音だけで構成されるブレイクで一気に盛り上がる! この絵本にもそんなブレイクがあったりして、意外とテクノを聴きながら読んでいくと素敵な「マリアージユ」が誕生しそうです。 もちろん、音などなく静かにこっそりとひっそりと自分の世界に閉じこもって「えへへ」と楽しむのも良い! 子どもたちにウケるのは必至!キャラクラー性を重視した絵本に慣れている子どもたちには、とても新鮮に感じる事でしょう! もうこれ以上の説明は野暮なのでこの辺で。 あっ、4月21日には、長新太が生前に残した未発表のラフに荒井良二が絵を描いた『にゅーっ でたよでたよ』(絵本塾出版)が刊行されるようです!こちらも楽しみです! 遂に世の中が長新太を求め出した予感を感じます。長新太の作品が広まれば世の中が変わると言っても過言じゃないです! まずはこの絵本を楽しんでください!
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【限定30冊】《宛名入りサイン本」》『なみのいちにち』
¥1,980
予約商品
阿部 結/作 40P ほるぷ出版 【「さん ささーん さん ささーん」と波のなか、それぞれの素敵な一日そこにはある。】 「あさだ! あたらしい たいようが かおを だして、わたしのいちにちが はじまる」 ねぼすけの鳥たちも海へ漁にでる人も、それを見送る親子は波打ち際で「さん ささーん さん ささーん」と波の音を聞きながら遊びます。おにごっこしている子どもたちや、恋人が波打ち際で楽しい時間を過ごしています。 昼下がりになれば、カモメの鳴き声、船の音、海水浴をしてる音、砂遊びを音など色々な音で賑やかになります。 何かに思いふけるのも波際はなかなか良い場所です。そして、散歩をしている人との出会いでから、その人の想い出にも触れたりもします。 夕方になり日が沈み、月が顔を出したら今夜もおきゃくさんがやってきて、夜の海も賑やかなになるのです。 色々な人や生き物にとって、それぞれの情景が、「さん ささーん さん ささーん」と波の音を耳にしながら、美しくあるのです。 淡く優しい色合いで、輪郭線も緩く、目の前に広がる海の景色と一体化するよう描かれた絵から、全ての生命たちの物語を愛おしく感じます。 【丈太郎のひとりごと】 波が運んできてくれる様々な物語がとても美しく描かれています。それは賑やかなことであったり、センチメンタルなことであったり、不思議なことであったり、色々な表情を見せてくれます。 僕は大学生時代に沖縄に住んでいましたが、この絵本を読むと沖縄の海のことを思い出します。しかし、同じ海でもエメラルドグリーンな沖縄の海は、ここで描かれている海とは違う印象を持ちます。それは何故だか?なんと表現したら良いのか?明確な答えは未だ出ないままです。 おそらくこの絵本で描かれている海は、南国特有なカラッとした明るいイメージが先行する海ではないのです。だから、お話もしっとりとしているように感じるかもしれません。 ちょっと心が乱れてしまっているなぁなんて思う時に手に取りたい絵本です。心が穏やかになっていくのを実感することでしょう。 みんなでワイワイと読むのではなく、一人で静かな場所でこの絵本を開いて読むことをオススメします。また、子どもと一緒に一日が終わる静かな夜にゆったりと読めば、きっと素敵な想いを分かち合うことが出来ることでしょう。 海の絵本だから夏にしか読めないということもありません。どの季節でも頭の中に海や「さん ささーん さん ささーん」と波の音は優しく聞こえてきます。 そんな不思議な魅力を持った絵本です。
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【「春の絵本」を探している保育園、幼稚園の先生たちにストライクゾーンど真ん中!】『20ぴきのピクニック』
¥1,650
たしろちさと/作 32P ひかりのくに 【春のピクニックは特別!今すぐにでもピクニックへ行こう!】 人間の家の床下にはねずみの家があって、おとうさん、おかあさんと18匹の子ねずみと全員で20匹の大家族です。 人間の家から「きょうは たのしい ピクニック」と声が聞こえてきました。あれあれ、耳を澄ますと床下のねずみの家からも「きょうは たのしい ピクニック」と小さな声が聞こえてきました。 「ピクニックって なあに?」と子ねずみ中にはピクニックに行ったことがない子もいます。 お弁当を皆んなで作って、さあ出発です。道中、気が先走って走っていく子ねずみや、転んでしまった子ねずみもいます。 さあ、つきました。公園に着いたら早速、たんぽぽを吹いてみたり、大葉子の草で綱引き、おとうさんがつる草で作ったブランコで遊んだり、おかあさんは花輪の作り方を教えたり、花輪の電車で藤の花のトンネルをくぐったり、春にしか出会えない草花で思いっきり楽しみます。 そして、いよいよお待ちかねのおべんとうの時間です。みんなで作ったおべんとうを春の公園で食べるのは格別です! 春の陽気がとても丁寧に優しく描かれているため、この絵本を読むとすぐにでも「春のピクニック」に出かけたくなります。 【丈太郎のひとりごと】 この絵本の作者であるたしろちさとさんの魅力は、何と言っても細部に至るまで丁寧に優しい色合いで描かれた絵と、ストーリーの中に入りやすい「余白」を感じる最小限に留めたテキスト( 文章)にあると思います。 この絵本は、たしろちさとさんの最新作です。僕は『みんなのいえ』( https://shop.meruhenhouse.com/items/84164157 )がとても好きで、たしろちさとさんの絵本デビュー作として2001年に発表され、新たに描き下ろされた絵も加わり、二十数年の時を経て再度2023年に発刊されたのです。 ボロボロの廃墟に次々と旅人が現れ、それぞれが家を直していく様子が断面図で描かれていて「断面図好き」の僕にはたまらない絵本で、そこから、たしろちさとさんの事は、数々の絵本で知っていたのですが、一気にファンになりました。 この絵本にもそんな家の「断面図」が少しだけ描かれており、嬉しく思っています。 何はともあれ「春のピクニック」の心地良さがとても伝わってくる絵本で、春ならではの草花が登場することで季節感を存分に味わうことができます。 絵も伸びやかに大きく描かれているため「春の絵本」などを探している保育園や幼稚園の先生方の求めている要素が詰まっているので、園で子どもたちと読むことに適していると思います。 もちろん、ご家庭でも子どもと一緒に読んで、ピクニックに出かけるのも良いでしょう! 春爛漫のオススメの絵本です!
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【あらゆるところに散りばめられた春のディテールにトキメキを感じる!】『はるのワンピースをつくりに』
¥1,430
石井睦美/作 布川愛子/絵 32P ブロンズ新社 【ときめき、かわいさがたくさん!】 春になりウサギのさきちゃんは、森へと向かいます。行き先は仕立て屋さんのミコさんのお店。 春になったので、ワンピースが欲しくなったのです。ミコさんはさきちゃんからどんなワンピースが良いか聞きます。 春の花ってどんな花? 春の色はどんな色? 春はどんな音? ポケット、ボタン、飾り付けをさきちゃんが選び、ミコさんがワンピース作りに取り掛かります。 さあ、どんな素敵なワンピースが出来上がるのでしょう? 細部に至るまで細かく描かれ、全体的に春をイメージしたような明るい色使いが印象的です。 【丈太郎のひとりごと】 この絵本を読んで、子どもたちがウキウキ、ワクワクする姿が想像できます。 服に興味を持ち出した子どもたちにオススメの絵本です。 そして、さきちゃんとミコさんのやり取りは、メルヘンハウスにやってくる子どもたちと僕のやり取りによく似ています。子どもたちの好きなものや最近興味があることを聞いたりしながら、子どもたちに合った絵本を僕がセレクトしている光景と重なります。 だからか、この絵本を読むと、僕はさきちゃんとミコさんのやり取りに共感を覚えるのです。 絵がとても鮮やかで瑞々しく鮮やかで、春の心地良さをふんわり爽やかに描かれているため、読んでいるとなんだかワクワクして緑の多い公園に出かけたくなります。 そして、ワンピースと言えば『わたしのワンピース』(こぐま社)が代表的なロングセラーの絵本ですが、『わたしのワンピース』が雰囲気を重視したファンタスティックなシンプルな絵本であるとすれば、この絵本は「春とはどんな季節?」と具体的に考えながら、ワンピースが作られていく工程が楽しく描かれています。 そのため、服の色々なパーツなどが描かれたページでは、子どもたちはどれが良いか迷ってしまい、なかなか先のページに進めないかも知れませんが、それも春のゆったりとした時間として味わうのも良いかも知れませんね! この絵本は春夏秋冬のシリーズ絵本なので、子どもたちには季節ごとにさきちゃんとミコさんのやり取りを楽しんで欲しいと思います! もちろん大人、特に女性はあらゆるところに散りばめられたディテールに、トキメキこと間違いないでしょう!
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【フラットな気持ちでこの絵本を開いて欲しい!】『あいであ』
¥1,650
こうの あおい/作 32P アノニマ・スタジオ 【「余白」がたっぷりの絵本の世界に入って遊んだり、考えたり、、、。】 朝が来て、猫や鳥たちが「なにして あそぶ?」と、ひなたぼっこしたり、かくれんぼをしたりして遊びます。 そこへ大変なことが!「なにがあったの?」何が大変かは分かりませんが、とりあえず急いでその場から逃げます。そして、そこから「どうしようかな?」と考えて「そうだ!」と思いつきます。 さて、その思いつきとは? 沢山の種類の色が使われていますが、決してカラフルではなく全体的に落ち着いたトーンで、センス良く「具体的」なものはしっかりとした構図で、「抽象的」なものは思いっきりカラフルに描かれており、そのバランスが絶妙です。 【丈太郎のひとりごと】 この絵本は約50年ほど前に海外の出版社の編集者の依頼を受けて制作していたものが、当時は日の目を見ることなかった作品を、長い年月を経てストーリーやテーマを練り直して制作された絵本のようです。 それをこの絵本の「あとがき」の解説で読んで、僕は「だからか!」と腑に落ちました。はじめて絵を見た時は「若手作家さんのとてもセンスの良いデザイン性の高い絵だなぁ。」と思ったのですが、作者の「こうの あおい」さんは、なんと1936年生まれ!イラストレーションはもちろん、テキスタイル、カーペット、絵本、玩具などの手がけているようです。 僕が腑に落ちたと言うのは、最近の絵本の傾向として「うるさい」ものが多いのです。それはストーリーが長文かつ複雑だったり、絵もぎっしり「綺麗」に目がチカチカするように描かれており、特にキャラクター性の強い絵本が支持されています。それらを全て否定する訳ではなく、あくまでもその類の絵本の傾向が多過ぎるとのことです。 しかし、この絵本は文章も「ひとこと」ずつ進んでいきます。それも内面を書いたものではなく、その「状況」を言葉で表現しているだけ。絵は落ち着いたトーンの色遣いで目も疲れず、隙間だらけ。気がつけば自然に絵本の中に入り込んで、絵本に出てくる仲間たちと一緒に考えたり、行動したりしている自分がいたりします。 今昔を比較しても仕方がないことですが、昨今の絵本はとにかく「余白」がないものが多いのです。文章も絵も情報量に溢れ返り、読者が絵本の世界観に入れないような、何だか作者の考えを押し付けられている「教科書みたい」なものが増えてきた気がします。 恐らくそれらは、世の中的に「結果主義」、「効率化」、「時短」の進む中で、より「分かりやすい」ものが好まれている傾向にあるから仕方ないことかも知れません。 それに比べて昔(どの時代で区切るかは定かではない)の絵本にはたっぷりの「余白」があります。読者が絵本の世界に入り楽しめるようになっています。その代わり、昨今の絵本のように「分かりやすい結果」がありません。エンドユーザーとなる読者が自由に解釈して、日々の生活の中に溶け込ませながら「こたえ」を見つけるものだと思います。中には未だに「こたえ」が見つからない絵本もあります。 そう、絵本は「こたえ探し」ではないのです! この絵本には「余白」がたっぷりあります。様々なものを削ぎ落とした「引き算の美学」を感じる絵本です。 フラットな気持ちでこの絵本を開いて見てください。きっと、自分が絵本の中にいるように感じるはずです。 もちろん、純真無垢な子どもたちならフラッと自由にこの絵本を出入りすることができるでしょう!
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【気持ちの良い朝を迎えるために寝る前に読みたい絵本!】『おはよう』
¥1,650
及川 賢治/作 32P 講談社 【さんかく と しかく と まる が そろうと なんとなく すごいこと が おこっているのです】 お父さんは読みかけの絵本を手に持ったまま寝てしまいました。横向きになったお父さんの大きな顔が目の前に広がっていて、鼻からはいびきが聞こえてきます。 僕は上を向いて仰向けになり、変なシミがあり座った猫の似ています。それから僕はうつ伏せになり、四角い枕に顔をつけて息を吸いました。そして、今度は横向きになり窓の方を向きました。 よく見ると窓に大きな三角のものがあります。近づいてみるとお父さんの鼻でした。僕は四角い枕を顔が突き抜けていました。 「あとは まるを まつだけだ」 三角は言いました。三角と四角の僕は並んで窓に座って、まるが来るのを待っています。 空がだんだんと明るくなって夜明けが近づいてきました。そして、まるがやってきました。 まるの正体とは? クレヨンのような粗い線とベッタリと塗られた風景が上品にマッチングして、色の配色がとてもセンスよく、夜から朝を迎える光景が温かく描かれています。 【丈太郎のひとりごと】 大活躍のユニット「100%オレンジ」の及川賢治さんのソロ作品です。「100%オレンジ」は僕がまだ20代の頃(25年ぐらい前)に突如出現し、あらゆる雑誌や広告媒体でよく見かけた人気のユニットです。 その頃から、オリジナリティに溢れた画風で、とても注目を浴び大活躍をしていました。 そんな「100%オレンジ」ですが、イラストレーションばかりが注目されている中で、実は絵本も2000年代初頭からコンスタントに出版されており、赤ちゃん絵本から大人向けのアート性を重視した絵本までジャンルも幅広く、毎回、新刊が出る度に「最高傑作!」と思えるような絵本で、今でも進化し続けています。 画風はパッと見たら「これは100%オレンジだな」とオリジナリティが高い絵本が多いですが、2020年に発刊された『ここは』(河出書房新社) https://shop.meruhenhouse.com/items/84131535 では、小説家・詩人として活躍されている最果タヒさんのお話に今回と同じく絵を「及川賢治」として描かれて意いるのですが、それは今までの「これは100%オレンジだな」と分かる絵ではなく、最初は及川賢治さんが描かれてた絵とは思いもよらず、素晴らしいものでした。 そして、今作はお話も絵も及川賢治さんが担当し、100%オレンジらしい絵で描かれているのですが、ストーリーがとても良く書かれています。お父さんが寝静まった後の「ぼく」が一人で見ている視線の先に何があるのか?そして、「ぼく」だけが体験する不思議なファンタスティックな夜をシンプルなテキストで表現されています。シンプルが故に読者がその世界観に入り込める「余白」が沢山あり、「ぼく」と三角と一緒「まる」を待つ夜を過ごしたいと思うことでしょう! 寝る前に読むのがオススメです! 新作が出る度に、僕らを驚かせ喜ばせてくれる100%オレンジはこれからも大注目です!
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【オシャレでポップで上品な「うんち」絵本セット!】
¥2,750
1、『うんちっち』ステファニー・ブレイク/作 ふしみ みさを/訳 31P あすなろ書房 【「うんち」の絵本なのに「茶色」が使われていない!何故?それは、、、。】 真っ赤なページにうさぎのこだけがいて、そこにはこんな一文が。 「むかし むかし あるところに、うさぎのこがいました。うさぎのこは ことばを たったひとつしかいえませんでした。それは・・・・・・」 次のページをめくると、真っ青なページにうさぎのこが笑って一言、 「うんちっち」 朝、お母さんがうさぎのこに起きるように言っても「うんちっち」。お昼、お父さんがうさぎのこにほうれん草を食べるように言っても「うんちっち」。夜、お姉さんがうさぎのこにお風呂に入ろうと呼んでも「うんちっち」としか答えません。 ある日、オオカミがやってきて「ぼうやを たべても いいかい?」と、うさぎのこに聞いても答えは「うんちっち」。ついにオオカミに食べられたうさぎのこ。一体この先どうなることでしょう? 各ページのベーシックとなる色は、どのページもカラフルな原色が使われており、絵も画面いっぱいに大きく描かれているため、2才さんぐらいから楽しむことが出来て、読み聞かせなどでも大活躍しそうです! 2、『うんちしたのはだれよ!』ヴェルナー・ホルツヴァルト/作 ヴォルフ・エールブルッフ/絵 関口裕昭/訳 24P 偕成社 【世界一、品のあるうんちの絵本!】 もぐらが自分の頭上にうんちを落とした犯人を探す為に色々な動物に、「ねえ きみ、ぼくの あたまに うんちおとさなかった?」と尋ねる。 どの動物も自分のうんちをもぐらに見せて、頭上のうんちと比較しながら違いを検証し、最後にはとうとう犯人を見つける。 「きみ」、「ぼく」などの言葉遣い、冷静な判断と行動、それらはとても紳士的な振る舞いである。しかし、もぐらの頭上には最初から最後まで、常にうんちが載ったまま!そのギャップが極上なユーモアを醸し出している。 とてもお洒落な洗練された文と絵で描かれた本作では「うんち」は汚いものだと感じない。 【丈太郎のひとりごと】 オシャレに興味のある方なら「モンドリアン」、「Bauhaus」という単語を耳にすれば「おっと!」と立ち止まることでしょう。 見てください!このモンドリアン柄をベーシックに「うんち」の絵本が2冊並んでいます。どうですか?下品に見えます?異臭をイメージしますか?そんなことは全く感じないですよね!むしろ馴染んでいると思いませんか? 何故ならこの2冊の「うんち」の絵本は、オシャレでポップで上品だから。 『うんちっち』は、思いっきりカラフルでポップセンスが炸裂し、一方『うんちっち』の主人公もぐらは自分の頭に「うんち」をした犯人を気品を漂わせる風貌と言葉使いで探しますが、ずっと最後まで「うんち」が頭に載ったままの上品なブラックジョークが効いています。 子どもは下品なものが好きなんです。それは止めることができない人間の「さが」なのです。そして、親ともなれば出来るだけ下品なものから遠ざけたいと思いますよね?しかし、それは残念ながら無理です。 解決策があるとすれば、下品に見えない、感じないものを子どもへ手渡すことです。 この2冊はそんな親のエゴを満たしてくれます! そして子どもと一緒に読んでみてください! きっとエレガンスな「うんち」絵本を体験をすることでしょう!
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【腐り切った現代社会へ、50年以上前からの贈り物!】『しばてん』
¥1,650
田島征三 /作 32P 偕成社 【この不条理を僕らはどう受け止めるべきか?】 むかし土佐に住んでいたとされる、すもう好きの妖怪「しばてん」。みなしごの男の子・たろうは、すもう大会で、あらゆる人を投げ飛ばしたことから、しばてんの生まれかわりではないかと疑われてしまいました。 そして、村の長者の「こんな きみわるい ばけものは、村にゃ おけん。」という言葉に同意した人々によって追いやられ、山奥でひとりで生きるようになります。 月日は流れ、人に会いたくなったたろうが山をおりると、村は日照りによって困窮し、人々は飢えにあえいでいました。そんななか、長者だけが家に米や食べものをたくわえているのを知ったたろうは、長者を投げ飛ばし、人々を飢えから救います。 みんなはふたたびお腹いっぱい食べられるようになり、たろうはまた村に住むようになりました。しかし、騒ぎをききつけた役人がやってきて、長者の米俵をぬすんだのは誰か、と村の人々を問い詰めて……。 ページごとに異なる色使いで、大胆に描かれた絵からは、たろうや村の人々のほとばしる感情があふれます。人間の業について、深く考えさせられる一冊です。 (出版社の紹介文から) 【丈太郎のひとりごと】 いつもはあらすじや特徴など、僕自身が書いて皆さんに紹介していますが、出版社(偕成社)の書いた紹介文がとても的を得たものであったので、そのまま掲載することにしました。 僕が皆さんに伝えたいことは、この本の「あらすじ」ではなく「この絵本とどう向き合っていくべきか?」と言うことです。 この不条理なお話を描いたのは、80才半ばを超えた今でも創作意欲が留まるどころが、よりアクティブに、絵本だけではなく、あらゆる手法、素材で芸術を生み出している、絵本作家というジャンルでは括りきれない「芸術家」と紹介した方が適切と思われる田島征三。 若き20代の学生時代に手刷りで創った最初の絵本がこの『しばてん』。それから『ふるやのもり』(福音館書店)という昔話の絵を手掛けたのが、メジャー(一般流通すると言うこと)デビュー作。こちらも当時は「こんな汚らしい絵はなんだ!」などと、当時は批判されたらしい。 そして、メジャー2作目がこの『しばてん』である。 「絵本界の重鎮」として、児童書業界からは一目置かれているうえ、大作家過ぎて恐れ多く近寄れないと言う人もいるだろうけど、そんな田島征三のことを僕は「征三さん」と気安く呼んでいる。 僕が「征三さん、あのさぁ〜」なんて話をしているところ目撃した人からは「なんて失礼な奴なんだ!」と思われたり、ビックリしたりされるけど、僕にとっては幼少時から知っている「お父さん(メルヘンハウス創業者の三輪哲)の変わった友達の一人」でしかないのである。なので、今更祭り上げるような接し方はしない。 そんな35才も離れた若造(と言っても50才、、、。)にも、征三さんは僕の話に真剣に耳を傾けて同じ目線で話をしてくれる。だから僕もお構いなしに新刊が出ると連絡して「作品は良いけど帯に書いてあることが気に食わない!」などと平気で言ってしまうのだ。 正直、幼き頃の僕にはこの『しばてん』という絵本に、そんな思い入れのある絵本ではなかった。「何かおどろおどろしい怖い絵本」と言うぐらいの印象であった。 しかし、ここ10年ぐらいでやっとこの絵本の凄さに気付いたのだ!もう50年以上前1971年に描かれたこの絵本は「今」でも生きている。いや「今」の陳腐した現代社会の闇を予言するかのように描いているではないか! 『しばてん』には「あとがき」があり、それは若き田島征三の決意表明のように思う。そんな「あとがき」の一文にこう記してある。 ”ぼくがひそかに期待していることは、子どもたちが、その成長の過程で、あるいは青年になってからでも、絵本『しばてん』が、かれらの心の中で発酵して、「ふっ」と、「あの絵本の作者がいおうとしたことは、このことだったのか!」と、心に沈んでくれることです。” そう、まさに僕がここ10年ぐらいで感じたことが書いてあるではないか! この心に沈んだことを僕はどう表現すべきか?とても悩んだ。悩んだ挙句、僕の中でひとつの答えが見つかった。 「この『しばてん』を子どもたちに手渡していくこと。」 正直、今までは自信がなかった。この『しばてん』に対して深く問われたらどうしようと怯えていた。それは後の征三さんの『とべバッタ』(偕成社)に描かれている臆病なバッタのようだったから。だけど、今なら僕はどんな天敵が現れようと、自信を持って『しばてん』を責任持って子どもたちに手渡せる。 本当に大人になると不条理なことが多い。人間関係も「ウィンウィンな関係で、、、。」なんて互いの利害関係がマッチングする時だけの軽いものや、今の日本は一部の政治家や大企業上役や資産家など「お偉いさん」たちに有利になるようなシステムであり、その「お偉いさん」たちの不正や不祥事も正しく裁かれることなく、いつの間にかフェードアウトしていく。そして、それを「善し」としている僕を含めた一般市民の罪も大きい。 本当にこのままで良いのか?征三さんの投げかけに、僕らはどう応えていくべきであろう?僕ら大人は今一度、自分の足元を見つめ直して、より人間らしく正しく生きていくべきではないだろうか? 僕はこの『しばてん』を全力で子どもたちに手渡していく。さあ、皆さんはどうしますか? Punks Not Dead!
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【こんなオシャレな「うんち」の絵本は見たことない!】『うんちっち』
¥1,320
ステファニー・ブレイク/作 ふしみ みさを/訳 31P あすなろ書房 【「うんち」の絵本なのに「茶色」が使われていない!何故?それは、、、。】 真っ赤なページにうさぎのこだけがいて、そこにはこんな一文が。 「むかし むかし あるところに、うさぎのこがいました。うさぎのこは ことばを たったひとつしかいえませんでした。それは・・・・・・」 次のページをめくると、真っ青なページにうさぎのこが笑って一言、 「うんちっち」 朝、お母さんがうさぎのこに起きるように言っても「うんちっち」。お昼、お父さんがうさぎのこにほうれん草を食べるように言っても「うんちっち」。夜、お姉さんがうさぎのこにお風呂に入ろうと呼んでも「うんちっち」としか答えません。 ある日、オオカミがやってきて「ぼうやを たべても いいかい?」と、うさぎのこに聞いても答えは「うんちっち」。ついにオオカミに食べられたうさぎのこ。一体この先どうなることでしょう? 各ページのベーシックとなる色は、どのページもカラフルな原色が使われており、絵も画面いっぱいに大きく描かれているため、2才さんぐらいから楽しむことが出来て、読み聞かせなどでも大活躍しそうです! 【丈太郎のひとりごと】 アメリカ生まれ、フランス育ちの作家が描く、世界で一番カラフルな「うんち」の絵本です! そして、この絵本の最大の特徴はなんと言っても「うんちの色」=「茶色」が通用しないこと。 何故なら、この絵本には「うんち」そのものが描かれていない「うんちの絵本」だからです! 偏見かも知れませんが、作者の「フランス育ち」というだけで「うんち」という単語から悪臭のイメージは膨らむことなく、むしろ清潔感のあるオシャレな言葉に聞こえてしまいます。 子どもは「うんち」とか好きですよね?でも、大人としては、あまり下品なものを見せたりしたくないですよね?そんな時にこの絵本は大活躍! しかし、影響の受けやすい純粋な子どもたちは、この絵本をゲラゲラ笑いながら読んだ後は、どう話しかけても「うんちっち」と答える可能性大なので、そこはお気をつけください!
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【tupera tuperaの隠れた名作を発掘!】『アニマルアルファベットサーカス』
¥1,980
tupera tupera/作 32P フレーベル館 【ポップでカラフルにアルファベット順に楽しいサーカスが繰り広げられる!】 まちにまった日曜日、クマの団長が率いる「アニマルアルファベットサーカス」がやってきました!最初は「Ant」ことアリの楽団が先頭に「Bear」ことクマの団長がやってきました! 「さあ サーカスが はじまるよ!」 お次は「Camel」ことラクダのこぶの上で「Dog」ことイヌが逆立ちを披露します。「Elephant」ことゾウが鼻から水を吹き出せば、「Frog」ことカエルと一緒に噴水ショーです。ショーは動物のアルファベット順に進みます。 「Iguana」ことイグアナと「Jaguar」ことジャガーは「ブルルン バルルン」とバイクに乗って曲芸対決! 「Mole」ことモグラと「Newt」ことイモリは空中ブランコ!モグラは「ぶるぶる」、イモリは「のりのり」etc....。こうして楽しいサーカスが続きます。さぁ最後の「Z」はどの動物がどんなフィナーレを見せてくれるのでしょう? 動物たちは全てコラージュで作られていて、紙、布、写真など様々な素材を上手に組み合わせられており、ごちゃごちゃになりそうで上手に配色や模様を配置しているので、センス良くカラフルに動物たちのイキイキとした曲芸を表現しています。 また、各動物の頭文字となるアルファベットには読み方と英語での表記と発音、日本語が記載されていて、英語に興味を持ちだした子どもたちは、楽しくアルファベットに触れることができるでしょう! 【丈太郎のひとりごと】 子どもたちは勿論のこと、大人までも楽しめる数々の作品を創ってきたtupera tupera。 その多くの作品はとてもポップでカラフルでオシャレでスタイリッシュ! 大人気の『パンダ銭湯』(絵本館)などでは、細部のディティールへの拘りをしっかりと持ちつつもポップに仕上げてしまうtupera tuperaの才能はただモノではないと思ったものです。 僕はtupera tuperaの作品をいくつも見てきて、ほとんどをコンプリートしていると思っていましたが、今作は不覚にも見逃していました。この絵本が発刊されたのは2009年。まだ僕がメルヘンハウスで働く前のことです。着実に版を重ねていることからも分かるようにtupera tuperaの「隠れた名作」ではないかと思います。 コラージュって本当に難しいのです。ただ、色々なものを切り貼りすれば良いだけでしょ?なんて思っている方、それは間違いです。しっかりとデザインの基礎を理解していないと、ただのゴチャゴチャした偽物現代アートみたいになっちゃうのです。 しかも今作はコラージュで作られた動物たちがアルファベット順に、しっかりと「サーカス」の起承転結が描かれているのがスゴイ!「アルファベット順」という縛りの中で良くぞストーリーに仕立てたものだと関心するばかり。 英語に興味を持ち出した子どもたちは「A」〜「Z」までを楽しく覚えることでしょう!大人はこのコラージュのクオリティの高さから「アート作品」としても楽しめます! 今作を開くと、どこか中東の国々を思い浮かべてしまうのは僕だけでしょうか?ポップなんだけどサイケデリックな怪しさを感じるのも魅力だと思います! まぁ、深いことは考えずに「ジャケ買い」しちゃってください!中身は期待以上だと思います。お楽しみに!
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『ポストがぽつん』
¥1,650
北川チハル/作 小池アミイゴ/絵 32P アリス館 【ポストの不思議な旅のお話】 ずっと使われていなかったポストが、嵐で海にドボンと落ちてしまいました。 しかし、ポストはずっと使われていなかったので、寝ていて気づきません。魚たちはびっくりして「きみ、だあれ?」と聞きますが、ポストの代わりに通りかかったカメが、お手紙を出すものだと教えてくれます。 魚たちはかぜの島のつむじくんへ手紙として、貝殻に声を吹き込んでポストにぽとん。そうすると久々のお手紙にポストは目覚めて届けに行くことになります。こうしてポストは、色々な物から手紙を届けるように頼まれます。ポストだから手紙を届けるのが嬉しくてたまりません。 ポストがお手紙を届ける不思議なお話ですが、配色がとても鮮やかなのにケバさはなく、そして元気良く思いっきり描かれいるに、希望を感じます。 【丈太郎のひとりごと】 本当に不思議なお話で、読了後の気持ちが自分でもよくわからないのです。楽しかったのか?切なかったのか?一体何を言わんとしているのだろう?と謎の絵本です。 しかし、その謎がこの絵本の言わんとしていることを深読みさせます。絵もとても素晴らしく、長年に渡りイラストレーションの仕事をされているアミイゴさんだからこそ描けるバランスの良いものとなっています。 アミイゴさんが最近の作品ですが、今までとは違う割と派手目な原色を多用してポップさやユーモアを感じるにも関わらず、スマートに仕上げているのは「流石!」の一言です!
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『はるのひ』
¥1,760
小池アミイゴ/作 32P 徳間書店 【父子の心温かな叙情あふれて、心に美しい響く】 こと君がお父さんの畑でお手伝いをしていると、遠くの方から煙が上がっているのが見えました。こと君は煙を見にいくのですが、道中の森の中で「とうちゃん、おーい!」とお父さんに声をかけながら進みます。お父さんは「おーい」と答えます。 どんどん進んでいくと掛け声が小さくなっていきます。心細くなりながら、とうとう森を抜けるとそこに広がる風景は夕日に染まった綺麗な景色でした。 色鮮やかに洗練された筆使いで描かれた田舎の風景は、時間の経過とともに、とても美しいグラデーション移り変わりで描かれています。しかし、何処か切なさや懐かしさと言う哀愁と、親子の無償の愛で結ばれた幸福感を感じます。 【丈太郎のひとりごと】 とにかく色彩が美しく、各ページが1枚の絵として成立しています。僕も息子がいますが、父の子どもへの愛情、子どもの父への絶大なる信頼を感じます。この絵本が発刊された当時(2021年)、5才だった息子と一緒にこの絵本を読み、息子と近くの森のある公園に行って「とうちゃん、おーい!」との呼びかけに「おーい」と返事をする『はるのひ』ごっこをしたものです。 小池アミイゴさんの絵本制作の歴史はまだ浅く、長年に渡りイラストレーションにおいて活躍されていた方です。また、子どもも含め被災地の方々など「社会的弱者」に対して、このような美しい絵から想像できないほど、アクレッシブに精力的に活動されています。 他人事にすることなく率直に受け止め、自分に何ができるのか?真剣に思考を巡らせ、自分の出来ることを損得勘定なしに行動に移す「強さ」をアミイゴさんにとても感じ、僕もとても影響を受けています。 この「強さ」と言うのは、アミイゴさんの「確固たる優しさ」であり、周囲の人々の「共感」を得る「包容力の大きさ」も彼の魅力です。 行動や発言は泥くさい人間味に溢れたものなのに、それらを「美しさ」に見事に変貌させることが出来る、数少ない作家であると思います。 子どもたちは勿論のこと、多くの方々にこの作品を手に取っていただければ、僕が言ってることが必ず理解できるはずです。 「静なる動」を、この絵本の中に飛び込んで必死にもがき、掴んで、自分のものにして欲しいと切に思います。
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【柴田ケイコさんの絵本の面白さは「パンどろぼう」シリーズだけじゃない!】『くまたのびっくりだいさくせん』
¥1,540
柴田 ケイコ/作 40P 白泉社 【なんとしてでもママをビックリさせるぞ!】 くまたはパンツだけで過ごすのが大好き!おまけに泥んこで遊ぶのも大好きだからいつも泥だらけです。そんなくまたを見てママはいつも注意してばかりです。くまたはママをびっくりさせて、 「くーちゃん、さすがね! って言われたいのです。そして、石を使ってママの顔を作りました。それを見たママはとても褒めてくれてので、もっとママをびっくりさせようとくまたは色々と考えて作ってみることにしました。 ママのお気に入りのカップに、綺麗な葉っぱとダンゴムシを入れて「くさカップ」を作りました。しかし、ママはびっくりしません。次はママの靴にお人形を寝かせて「くつベッド」を作りましたが、ママはちょっとだけ笑いましたが、びっくりしません。 その後も卵に沢山絵を描いて「かおたまご」、エプロンにテープをいっぱいつけた「テープエプロン」、「セミのぬけがらぼうし」、「まぜまぜチャリチャリじてんしゃ」、「どんぐりいっぱいおけしょうポーチ」など作りますが、ママは全く反応しません。 そして、最後に「ママのかおつきキラキラかがみ」を作り、その鏡を見ているママの部屋へ行って覗いてみると、、、。 子どもがあの手、この手でママを驚かそうとする姿を、カラフルに可愛く何とも言えない表情などをユニークの描いています。 【丈太郎のひとりごと】 柴田ケイコさんと言えば、「パンどろぼう」シリーズ(KADOKAWA)で大人気ですが、本作のように「パンどろぼう」以外にも、とても楽しく面白い絵本を沢山書かれています。 今作は、子どもが「親を楽しませよう!」と、必死に色々と考える姿を面白おかしく描いています。子どもは褒められることが大好き!しかも、ママやパパに褒めらたりすることは格別なことです。 そんな子どもの心情をよく捉えたこの絵本、きっと子どもたちはスーッとこの絵本の中に入って楽しむことでしょう! ママやパパにには注意!きっとこの絵本を読んだ子どもは、何かを仕掛けてくるでしょう。そんな時はこの絵本のように受け止めてあげてくださいね。それが行き過ぎたことだとしても。 ママ、パパ、何があっても受け止める覚悟の準備はOKですか?
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【丈太郎、大興奮の絵本!】【僕らの知らない夜はカラフルで希望に満ちている!】『よるのあいだに…』
¥1,760
ポリー・フェイバー/作 ハリエット・ホブデイ/絵 中井はるの 32P BL出版 【夜は暗いのではなく明るく、そこには素敵な人達の息吹きが存在する。】 私は暗くなってきたので、お茶を飲んで歯を磨き、パジャマに着替えます。パパは洗い物もしています。ママはご飯を食べて、コートを羽織りました。パパは洗い物もしています。 「いってきます」 と、ママは手を振ります。ママはこれから大切な仕事に行くのです。 夜の間、たくさんの人が仕事をしています。サミーさんはビルの掃除をします。誰もいない夜の方が掃除がしやすいからです。ジョルジオさんは、カメラが映し出すビルのあちこちを見守っている。 ハッサンとアミーナさんは警察官です。みんなが安全に暮らせるようにパトロールをします。キャシーさんはテレビレポーターで、私たちの周りで起きたこと、世界で起きたことなど、みんなが朝起きた時に大切なニュースを伝える為です。 レムさんはバンドでサックスを吹き、みんなは楽しくなって踊り出します。バンドのメンバーは演奏が終わるとイーバさんのスーパーに買い物に行きます。そこにスーパーに荷物を届けるためラビさんのトラックがやってきます。 パン屋のルイージさん、線路工事をするジョニーさんとドットさん、救急救命士のダニーさんとトッドさん、助産師のフィオーナさん、皆んなが朝を気持ちよく迎えられるように夜に仕事をsています。 そして、ママの仕事は? 「夜=暗い」とイメージを払拭する、カラフルな色遣いで、それぞれの仕事の役割を明るく描かれています。 【丈太郎のひとりごと】 たまに「なんでもっと前にこの絵本に出合わなかったのだろう!」と後悔をすることがあります。この絵本もそんな後悔をした絵本です。 「夜の仕事」と聞くと、何処か偏見を持ってしまう方も多いかと思います。それは日中に働く人が多いだけの理由であり、僕たちが寝静まった頃に、僕らが想像出来ないような、活発に明るく働く人達がいて、その人達のお陰で僕らは次の朝を何もなかったように迎えるのです。 「夜」を描いた絵本で、こんなにカラフルな色遣いでワクワクしながらページをめくって楽しめる絵本は、僕の知る限りではこの絵本に敵うものはありません。 また描かれている夜の街の風景がきらびやかで「暗闇」などは一切感じません。そして、自身の仕事に誇りを持ってる人達は明るくイキイキしています。 僕はこんな夜の世界に飛び込みたくなるような気持ちが高まり、興奮が醒めないままこの文章を書いています。 もう、絶対的にオススメです!多くの日中をメインに仕事や生活を営んでいる人達、全てにこの「夜」を届けたい!そして、夜に仕事をしている人に大きな賛辞を送る!
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【無駄なものがない、凛とした佇まいが美しい!】『いろいろたべもの』
¥1,430
内田有美/作 32P 偕成社 【カラフルな色づかいと写真のようなイラストがとても美しい!】 白がバックのページには、白い食べ物の影が描かれています。ページをめくるとその影の正体が現れます。黄色がバックのページには、黄色い食べ物の影が描かれています。ページをめくるとその影の正体が現れます。 こうしてオレンジ、赤、緑、ピンク、紫、黒と様々な色がベーシックとなり影が写し出され、ページをめくると、そこには様々なその色の食べ物が描かれています。 色の使い方のセンスと、写真と見間違えるような食べ物のイラストがとてもアーティステックに描かれていますが、繰り返されることにより、幼児さんから楽しむことができ、大人はこの絵本のアートとして楽しむことが出来ます。 【丈太郎のひとりごと】 最初に食べ物のイラストを見た時に「本当にイラスト?写真じゃないの?」と何度も眺めました。今も眺めてもイラストとは信じられない精巧さに、ただただ「美しさ」を感じます。 しかし、そんなアート性が高くとも、カラフルな色遣いでポップに仕上げられているので、これは子どもたちに「本物のアート」を見て、感じてもらいたいと思います。 無駄な装飾もなく、凛とした佇まいを醸し出しているこの絵本。 子どもから大人まで多くの方に見て頂きたいです。
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【またもやラスタカラーで描かれた長新太の名作!】『たぬきのじどうしゃ』
¥1,320
長 新太/作 32P 偕成社 【繰り返されるパニックの警笛がクセになる!】 たぬきのおじさんが車で走っていると、魚がやってきて「かいぶつが でたのです。たすけてちょうだい。」と言うので、川に行ってみると川の中から大きなカエルの怪物が出現し、たぬきのおじさんは車ごと捕まってしまいます。 たぬきのおじさんはパニック状態になり、必死に車のクラクションを鳴らしたり、お腹を叩いて抵抗します。 「ぽんぽん ぶうぶう ぽんぶうぶう ぽんぶう ぽんぶう ぽんぶうぶう 」 それでもカエルの怪物は、離してくれません。さて、たぬきのおじさんの行く末は?車は一体どうなっちゃうの? これまた前回紹介した『はんぶんタヌキ』(こぐま社) https://shop.meruhenhouse.com/items/101172978 と同じく、基本的に赤・黄・緑・黒と言う「ラスタカラー(ラスタファリ信仰(アフリカ回帰思想を持つジャマイカの宗教)」で派手に、そしてシンプルながらダイナミックに描かれています。 「ざぁー ざぁー」、「べしゃん、べしゃん」、「げろげろげー」などの擬音語も多様されており、2才ぐらいの子どもから大人まで楽しめます。 【丈太郎のひとりごと】 僕の小3の息子がまだ2〜3才だった頃、息子がとても好きでかなりのヘビーローテションで読んでいました。 毎回「ぽんぽん ぶうぶう ぽんぶうぶう ぽんぶう ぽんぶう ぽんぶうぶう 」は息子と一緒に言うのですが、ある夜この呪文のような言葉が何故だか面白くなり、「ぽんぽん ぶうぶう ぽんぶうぶう ぽんぶう ぽんぶう ぽんぶうぶう 」と唱えれば唱えるほどゲラゲラと笑い、テンションもあがる一方!結局その日は疲れるまで不思議な呪文を唱え終了! 寝る前だと言うのに、息子のハイテンションが収るのに時間がかかり困ったのも良き思い出です。 僕が、子ども向けのおはなし会や、大人向けの講演会でも、この絵本を読むのですが、いつも「エビバディ!トゥギャザー!」と皆んなで「ぽんぽん ぶうぶう ぽんぶうぶう ぽんぶう ぽんぶう ぽんぶうぶう 」と大合唱! 子どもは最初からマックス、大人は最初は恥ずかしいそうにしているけど、徐々にこの呪文に引き込まれていき、気付けば我を忘れたかのように盛り上がっていきます! そして、この絵本の大きなポイントは最後の終わり方です。「終わり方」と言う表現も違うかもしれません。長新太から読者に委ねられ、そのバトンを受け取った読者は、自らの創造力を駆使してそこから走り出すのです。 終わりなき旅の始まりです。 我が子にはもちろんのこと、保育園や幼稚園、おはなし会などで盛り上がること間違いなし!皆んなで呪文を唱え、長新太からのバトンを受け取りエンドレスな旅を子どもたちと楽しんでください。 僕は、この絵本の読み方に自信があるので「イマイチ読み方がわからない!」と言う方がいらしたら、遠慮なくご相談ください。三輪丈太郎が丁寧に伝授します! それにしてもラスタカラーが気になるなぁ、、、。
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【重版未定のため入手困難な名作!】『はんぶんタヌキ』
¥1,430
SOLD OUT
長 新太/作 32P こぐま社 【削ぎ落とされたシンプルな絵とテキストで独特の世界観が広がる!】 「タヌキが これから ばけますよ ばけますよ」 こんなシンプルな文章から始まります。そしてページをめくると 「あらあら はんぶん タヌキです タヌキです」と、鳥の半分がタヌキになっています。 またページをめくると今度はキャベツが、その次は花が、その次は魚が、どんどん半分になってきます。 そして、どんなものでも文章はたった一文、「あらあら はんぶん タヌキです タヌキです」と繰り返されるのみ。もうこのループに入ってしまったらもう抜け出すことが出来ません。そして、最後は、、、。 基本的に赤・黄・緑・黒と言う「ラスタカラー(ラスタファリ信仰(アフリカ回帰思想を持つジャマイカの宗教)」で派手に、そしてダイナミックに描かれた絵が「これでもか!」と言わんばかりに目に飛び込んでくるインパクト大のナンセンス絵本の究極とも言って良いぐらいの絵本です。 【丈太郎のひとりごと】 長新太と言えば「ナンセンス絵本」の巨匠。ナンセンス絵本とは色々な解釈がありますが、実際には絶対にあり得ない、非現実的、非日常的なことが描かれている絵本のことを言います。 そんな長新太の代表作と言えば『キャベツくん』(文研出版) https://shop.meruhenhouse.com/items/83971678 ですが、この絵本に比べたら『キャベツくん』なんて、とても分かりやすい絵本です。 絵も文章も究極に削ぎ落とされている今作は、長新太の中でも名作であり迷作でもあります。 「だから?」なんて意味を求めるのではなく、ループされる「あらあら はんぶん タヌキです タヌキです」のグルーヴ(うねり)は、ひとつのフレーズを延々と繰り返す中で、力強いメッセージを投げかけるジャマイカが発祥の地であるレゲエミュージックそのものとも言えます。 配色もレゲエで多用される赤・黄・緑・黒で描かれていて、今は亡き長新太にかくにんすることは出来ませんが、レゲエミュージックを知っていて描いたのか?偶然なのか?とても興味深いところであります。 例えそれが偶然だったとしたら、長新太は「ラスタファリ信仰(アフリカ回帰思想を持つジャマイカの宗教)」のように、生き物たちの自然回帰が根本にあったかもしれません。 本当に謎だらけですが「意味を求めることの無意味さ」のようなことを長新太は一貫して絵本と言うフォーマットで子どもたちにメッセージとして描いていたのかなぁと思います。 大人は「意味」ばかりを求めます。そして「結果」を重要視します。そんな大人たちの思考により、窮屈な気持ちを抱いて生きている子どもたちが多いと思います。 子どもたちの無限なる自由な創造力の解放と、大人への注意喚起が提示された絵本。 残念ながら、現在のところはこの絵本の新品に出合うことがない状態です。是非ともこの機会に入手することもオススメします。そして、子どもたちへ「結果」を求めずに「感想」を求めることもなく手渡して欲しいと切に願います。
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『バナナじけん』
¥1,540
高畠 那生/作 32P BL出版 【ラッキー→トラブル→?=ループ】 車の後ろに繋がっているカートにバナナが大量に載っています。 「あっ バナナが ひとつ おちましたよ。」 そこへ猿がやってきてバナナを食べて皮を道路にポイッ!そこにうさぎが走ってきましたが、バナナの皮には気づかず滑ってしまいました。しばらくしてワニがのそのそとやってきてバナナの皮を見つけて背中の上にのせました。 そして、また車からバナナが落ちました。そこへ猿がやってきて、、、。 「どうすると おもう?」→「どうなると おもう?」→「どうなると おもう?」と、しばらく続くループ状態。一方では減って、その一方では増えて、その間で痛い目に遭って、何事もなかったようにのそのそと。 一本道で起こる、それぞれの立場のそれぞれの状況の違い、しかし、最後は一緒。さあ、何が一緒なんでしょう? コミカルで躍動感に溢れたループするストーリーをユーモアのある絵で見事に描いています。 【丈太郎のひとりごと】 僕が那生くんの絵本でまず最初に頭に浮かぶのは、この『バナナじけん』です。皆さんの中にも「高畠那生と言えば『バナナじけん』!」と思う方も多いことでしょう。 この絵本は那生くんの代表作と言っても過言でありません!発刊されたのは2012年!もう13年前の絵本なんですね。そして、この絵本が今も子どもたちは勿論のこと、大人からの評判もすこぶる良いのです。 那生くんの描く絵本の特徴として「ループ(繰り返す)」しているものが多いですが、それはこの絵本から始まっているように思います。 タイトルのインパクト、ストーリー、絵、どれもがコミカルでユニークかつシュール! これぞ「高畠那生ワールド」なんです! えっ?那生くんの他の絵本は読んだことはあるけど、この絵本は知らない?それこそが事件です!一刻も早く手に入れてください!