-
【原画展開催記念!】★宛名入りサイン本★『ぼくがここに』
¥2,090
予約商品
まど・みちお/作 きたむらさとし/絵 32P 理論社 【偉大なる詩人、作詞家「まど・みちお」の代表作が絵本に!】 なにかが、そこに「いる」。なにかが、そこに「ある」。ただそれだけのことが、どんなにかけがえのないことなのか……。 まど・みちおの代表作であるこの詩に向き合うことは、まるで「大きな謎解きのようだった」と画家は語る。とてつもなく大きな、宇宙的なものに守られている……そんな安心感につつまれる絵本。 没後10年を記念して刊行が続く「まど・みちおの絵本」シリーズの一冊。 【丈太郎のひとりごと】 「まど・みちお」という名前を知らなくとも、彼の詩や歌の詞は絶対にどこかで聞いているはずです。例えば、「ぞうさん」「おさるがふねをかきました」「やぎさん ゆうびん」「一ねんせいになったら」などが有名な作品です。 詩というものは、表現したい想いを短い言葉に乗せて表現されるものであり「言葉を削ぎ落とす美学」とも言えるでしょう。そして、その少ない言葉から、その詩を手にして見た読者が自由に想像する楽しみがあります。 今作はそんな「まど・みちお」の詩に、絵本作家・画家のきたむらさとしさんが絵に起こして絵本となっています。「大きな謎解きのようだった」と、きたむらさんが語るように、この詩に対してどの言葉を拾い場面として絵に起こしていくのか?これはとても大変な作業であったと思われます。 イギリスでの生活の長かったきたむらさんの描く絵は、絵本に書かれた「きたむらさとし」という名前を見なければ、海外の作家と思われるお客様もメルヘンハウスでは多くいらっしゃいます。 今作においてもそのような雰囲気は健在でありながらも、排他的な都会の喧騒の濁った薄い色使いから、自然に向かって行くに連れて色彩が鮮やかにくっきりとなっていくページをめくる度にそのグラデーションがポジティブに変化していくことが、読者の心情をきっと揺さぶることでしょう。 しかし、それらは見事に詩の世界観を壊すことなく、詩に沿って描かれながらも、きたむらさんの感じ取った風景が既に自分のものとして見事に描かれています。 僕は、世界各地で起こっている紛争や内戦や戦争、自然環境破壊、デジタル社会など、僕たちが住む地球上の至るところで「本当にこのままの世の中で良いのだろうか?」と疑問に思いながらも、自分の無力さ、小ささを感じる時があります。自分の存在意義に疑問を持ってしまい「何の為に生きているのであろうか?」と考えてしまうことも。 しかし、この詩からは、そんな自分の不安定な気持ちを払拭させるような「生きている存在意義」が明言されています。そして、この地球ではどんなものでも守られていると安心感も与えてくれます。 この絵本は、きっと皆さんにとって「生きていること、生きていくことのお守り」のような存在になるような気がします。 子どもから大人まで、多くの人々の手元にこの絵本が行き渡ることを切に願います。
-
【揺れ動く子どもの心情に同感!】『ともだち』
¥1,760
リンダ・サラ/作 ベンジー・デイヴィス/絵 しらい すみこ/訳 32P ひさかたチャイルド 【仲良し2人組に、新しい友達が加わったら、、、。】 僕とエトは大の仲良しで、いつも2人で段ボール箱を丘の上まで引っ張っていって、王様になったり、空を飛んだり、海賊にも、宇宙飛行士にもなって、いつも一緒に楽しく遊んでいます。 何をするにも2人は一緒で「ふたり いっしょ」が僕は大好きです。 ある寒い日のこと、知らない男の子が丘の上に段ボールを引っ張ってやってきました。名前はシューといって、いつも僕たちのことを見ていたようで、そして、こう言ったのです。 「なかまに いれてくれる?」 エトは「いいよ」と答えて、それから何日かするとエトとシューは、一緒に遊ぶようになり、僕が仲間外れのようになった気がしました。そして、その日の夜に家で自分の段ボール箱をぐちゃぐちゃに潰してしまいます。 エトとシューが一緒に遊ぼうと誘いに来ても僕は行きませんでした。そして、エトと僕のダンボール箱が二つ並んだ絵を描いて、エトと2人で一緒に遊んでいた楽しかった日々を思い起こすのです。 そして、ある日のことシューが家に来て、君に良いものを作ったから見にきてというのです。そこで、僕はカーテンの隙間から外を覗いてみると、、、。 全体的に中間色を中心に描かれているため、とても優しく、温かく、穏やかな時間が流れているような爽やかな気持ちになれる絵本です。 【丈太郎のひとりごと】 この絵本を読み終わって「わかるよ、よ〜くわかるよ、その気持ち!」と僕は心の中で呟きました。それは僕にも似たような経験が少年時代にあったからです。おそらく、その気持ちって誰もが一度は経験したことがあることではないでしょうか? 実は大人になってからでも、そんな気持ちを抱くことが何度もありました。その度に「自分はちっちゃい人間だなぁ。」と思ったものです。 独占したい気持ち、そして新しい出会いや事象に対する警戒心が強いと、どうしても抱いてしまう気持ちです。今までの関係性が壊れてしまうのではないかと、取った、取られたというように心配になっていくものです。 この絵本は、そのような複雑な心情をとても正直に描いています。そして、新しい関係性の素晴らしさも。 パキッとした原色で描かれている絵も良いですが、中間色の使い方が見事で、子どもたちの汚れのない純粋な心情が爽やかに伝わってきます。街中でも新しい車の色などは中間色の色が増えましたよね。時代的に世の中では中間色ブームなのかもしれません。 いずれにしろ、誰しもが経験したことがあるようなお話。どこか懐かしくて恥ずかしくて、できれば忘れたい思いだったりもしますが、今まさにこの絵本のストーリー真っ只中の子どもたちには読んでほしい絵本です。
-
【丈太郎が今注目する画家が絵を描いた自由な絵本】『てんさいを そだてる 20の しつもん』
¥1,650
マック・バーネット/作 クリスチャン・ロビンソン/絵 いしだみき/訳 38P マイクロマガジン社 【答えより大切なものは、そこに辿り着くまでの過程なのです!】 「この寝ているおじさんの頭をゴツンとしたのは誰?」 「この牛さんはどうやって風車の上にのぼった?」 「このなかに銀行強盗をした人がいます。誰だと思う?」 などなど、想像力を掻き立てる質問が目白押し。 正解はひとつではありません。 でたらめでもOK! 自由に考えて、君だけの正解を答えてみよう! 英国で大絶賛! 遊びながらお子さんの無限の可能性を引き出す、おしゃれでかわいい質問絵本。 (出版社より引用) 【丈太郎のひとりごと】 この絵本は、絵を描いているクリスチャン・ロビンソンという画家を調べていたら、たまたま出合った絵本です。僕が「あっ、いい絵だなぁ!」と思う絵本を見つけて、誰が描いたか調べると彼の絵だったという絵本がたくさんメルヘンハウスに集まってきました。 『きみはたいせつ』(BL出版) https://shop.meruhenhouse.com/items/85206107 『ちっちゃな サリーは みていたよ ひとりでも ゆうきを だせたなら』(岩崎書店) https://shop.meruhenhouse.com/items/84568458 『おばあちゃんと バスにのって』(すずき出版) https://shop.meruhenhouse.com/items/84533961 『いつか きっと』(あすなろ書房) https://shop.meruhenhouse.com/items/84136655 などが、彼が絵や文章を手がけた絵本です。コラージュ的要素が強く、切り絵が多用されていて色使いもとても鮮やかで、本当に素晴らしい画家(アーティスト)であると思います。 そして、どのお話もポジティブであり希望を見出す絵本ばかりなのです。僕は今、虜になっているアーティストは何人かいますが、彼もそのうちの1人です。 この絵本には「答え」、「正解」というものが存在しません。ただの問いかけだけがされています。クリスチャン・ロビンソンが描いた絵から、その問いかけに答えや正解を見出そうとする絵本です。 つまりは「結果」を重視している訳ではなく、答えや正解を見出そうとする過程を楽しむ絵本なのです。今、私たちは大きな岐路に立たされていると思います。それは「結果主義」、「効率化」、「時短(タイパ)」を最重要し、それらを人間の能力ではなく「AI」に託していることです。 「AI」は、過程などを踏むことなく正しい「結果」を、あっという間に提示します。それはとても便利なことですが、とても危険なことでもあると思います。何故なら「人間が考えることをしなくてよくなる」からです。 人間が思考を巡らせなくなったら、一体「感情」は何処へ行ってしまうのでしょう?これからの子どもたちへの教育も、「AI」をどのように効率良く活用するか?そのプロンプト(キーワード)を学ぶことになり、本質的な「学び」ではなく「テクニック」を習得するようになっていくかもしれません。 それが本当に「人間の進化」と言えるのでしょうか?このようなことを考えると僕はとても未来に不安を感じます。これから先、僕ら人間はアナログとデジタルの棲み分け、境界線をしっかり引かなければ「感情」を失っていくことになるでしょう。 例えば、ラブレターを書くにしても、自分の気持ちをどのように伝えれば良いのか?そんなことに悩むことなく、考えることと言えば、どれだけ優秀なラブレターを書けるか?「AI」にどんなプロンプト(キーワード)を入れれば良いのか?ということになります。 「本当にそれで良いの?」 僕はそんなことを最近よく考えます。そのためにも今作のような「無駄な時間」がメインの絵本が重要なのです。 子どもと一緒にこの絵本を開いて、自分を自由に解放してあらゆる想像を巡らしてみましょう!そこから出た「答え」は全部「正解」です!そして、唯一「AI」には出来ないことなのです。それこそが「個性」です。 さぁ、デタラメな旅へ出発しましょう!
-
【角野 栄子のイメージとは異なる不思議な絵本】『イエコさん』
¥1,540
角野 栄子/作 ユリア ヴォリ/絵 32P ブロンズ新社 【なんでも食べてしまう恐ろしい家、それが「イエコさん」】 森のそばにある一軒の古い家「イエコさん」は、以前はトコロさんというおばあさんが住んでいましたが、「イエコさん」を残して町へ引っ越してしまいました。 しかし、「イエコさん」は「ひとりぼっちでも たのしくくらすわ」と、隠していた手足を伸ばして、毎日エクササイズをしています。 ある日のこと、ネズミが来て「ここに いてもいいですか?」と頼みますが、「イエコさん」は断ります。そこでネズミは寝る前に子守唄を聞くのも良いものだと、歌い出しました。しかし、「イエコさん」は断ります。 それを聞いてネズミは「ふん ひとりぼっちで さみしいくせに」」と言ったところ、なんと!「イエコさん」は、ネズミを「ぱくり ぺろり.」と食べてしまいます。 その後も、「イエコさん」を訪ねて来たネコ、コブタを丸飲みしたオオカミ、コブタのお母さん、男の子を「ぱくり ぺろり。」と食べてしまいます。 夜になり「イエコさん」に異変が起こります。どんどん ぱんぱんに膨らんでいったのです。空が少し明るくなってきても「イエコさん」は膨らんでいくばかり。 そして、突然どこからかオナラの音が「ブブブブブ〜。」そして「イエコさん」は、、、。 クラシカルスタイルで描かれた絵が「イエコさん」の恐ろしさを独特の雰囲気を醸し出しています。 【丈太郎のひとりごと】 絵の雰囲気から何十年も前に描かれた絵本だと思いきや、2007年に発刊されたこの絵本。それもそのはず、お話もクラシカルな昔話のようで「はて?どこかで読んだようなストーリーだな。」なんて思うような内容です。 作者はもう説明不要なぐらい有名な『魔女の宅急便』(福音館書店)を書いた角野栄子さん。最近では90歳に見えない出立ちで、赤がトレードマークな素敵な女性として、そのライフスタイルも注目されています。そんな角野栄子さんが書いたお話なので、面白くないわけありません! そんな面白いお話の絵を描いているのは、ユリア・ヴォリさん。日本では作絵の「ぶた」シリーズ(文溪堂)が5冊発刊されています。 何故、国境を超えてこの作品が創作されたかは不明ですが、何とも言えないクラシカルさを感じる不思議な絵本なのです。角野栄子さんのいわゆる「ブラックユーモア」を、ユリア・ヴォリさんの絵で上手く表現しているため、「絵本」としての安定感がとても感じます。 角野栄子さんの作品の中でもあまり知られていない今作。是非とも手に取って読んでみてください。今までの角野栄子さんのイメージがちょっとだけ覆るかもしれません。
-
【今までの作品の中でも最高傑作!と言っても間違いない!】『ちょうちょちょうちょ』
¥1,760
きくちちき/作 24P 偕成社 【ちょうちょに素朴な問いかけが優しく温かい】 「ちょうちょ ちょうちょ どこから きたの?」 「ちょうちょ ちょうちょ なにしているの?」 こんな素朴な問いかけをちょうちょにしながら、自らその答えを想像していきます。 各ページの基本となる色が鮮やかで、ちょうちょがその様々な色彩の中で綺麗な色で力みのない自然体で描かれた絵からは、ちょうちょのイキイキとした生命の喜びに溢れた姿に、思わずうっとりしてしまいます。 【丈太郎のひとりごと】 僕の中での「きくち ちき」という作家のイメージは、どちらかというと「大人向けの絵本を描く作家」でしたが、2017年に発刊された『パパおふろ』、『パパのぼり』(ともに文溪堂)辺りから、「どんどん子どもに近づいているなぁ。」と、近年の作品を観てイメージは変わってきました。 きくち ちきさんの作品は、気負うことなく自然体で筆がスラスラと自然に動いているような躍動感、そしてダイナミックさを感じます。 今作はちょうちょに語りかけるようなリズムの良いシンプルな文章が繰り返されているため、本のサイズからは想像しづらいですが、1歳半〜2歳ぐらいの子どもから楽しめるようになっています。 そして、これは僕の個人的な思いですが、今までの中で最高傑作です!文章は極力少なくし、絵の力をとても感じます。終盤の見開きのページなんかは、その色彩豊かな伸び伸びとしたどこまでも続く風景にとても自由さを感じ、なんだか嬉しくなってしまうのです。 大袈裟に言えば「生きててよかった!」って思うぐらいです。 そんな今作ですが、小さな子どもから大人まで、全身でこの絵本を楽しんで欲しいと思います。
-
【カンディンスキーやモンドリアンより早く、抽象絵画を描いた画家がいた!】『ヒルマ・アフ・クリント』
¥1,870
ハリエット・ヴァン・レーク/作 野坂 悦子/訳 25P 朔北社 【目に見えないものは描けるのだろうか?】 ヒルマの原点となる場所は、たぶんアデルソ島で夏を過ごし外で遊んだ島です。ながされる雲、砂浜にうちよせる波、ちいさな虫、鳥、魚。葉っぱや花たちなど、自然界の美しさに惹かれていきます。 ヒルマは未来は考えました。そして何よりやりたかったのは、 「自然をとらえて 描くこと。」 ここからヒルマの挑戦が始まります。それは目には見えないものを、どのように絵として表現できるかということです。果たしてヒルマは自分が描きたい絵を描くことができるのでしょうか? 落ち着いた色彩にて、ふんわり柔らかく優しい絵のタッチで、ヒルマの歩んだ道を美しく描いています。 【丈太郎のひとりごと】 抽象画というものは、そこに存在するものを描くのではなく、自分の感情や思考、つまり自分の頭の中に広がっている宇宙を表現するものです。よって、その作品を鑑賞する側から言えば、自由にその作品を自分の解釈で楽しむことができます。しかし、逆の捉え方をすると「意味が分からない」などと思うこともあるでしょう。 抽象的な表現には必ず作家の葛藤があり、あらゆる事象に対して敏感に察知する能力も試されます。「そこに存在するもの」=「目に見えるもの」ではないということが、抽象的な表現には必ず付きまといます。 そのような挑戦にいち早く挑戦したヒルマの名前が、芸術に詳しい人たちにも知られていないのは、彼女が亡くなる際(1944年没)に、死後20年は公開しないように言い残したため、なかなか世の中には知られる存在ではなかったのです。 そんなヒルマ・アフ・クリントというアーティストが歩んだ美しい人生を、感じてみてください。
-
【表からも裏からも読める!】『やまからにげてきた・ゴミをぽいぽい』
¥1,430
田島 征三/作 36P 童心社 【いち早く自然環境破壊に対して問題定義をした必読な絵本!】 まずは表面『やまからにげてきた』から開くと、山に住む動物や虫、鳥たちが「たすけて」と叫びながら逃げてきます。ページをめくるごとに、その悲痛さが増し、取り残されて命を奪われる生き物たちも出てきます。 彼らの住処である山は、ゴミ処分場の建設によって破壊され、綺麗な森の木の緑などはなくなり、黒く濁った色合いだけの巨大なゴミ処分場となっていきます。 その反対の裏面『ゴミをぽいぽい』から開くと、人間が「あれもほしい これもほしい」、「やすいからどんどん買う」などと計画性もなく次々に物を手にしていきますが、「あまったから ぽい」、「あきたから ぽい」、「こわれたから ぽい」と、何を考えることなくゴミを捨てていきます。 そして、そのゴミはやがて黒く濁った色合いだけの巨大なゴミ処分場へと運ばれるのです。ちょうど真ん中のページで二つの物語が繋がるのです。 『やまからにげてきた』では緊迫感を悲壮感が、「たすけて」「タスケテ」と絵の中のひとつとして荒々しく混沌とした状況が描かれています。一方、『ゴミをぽいぽい』で描かれている人間の顔は、どの表情も何事もなかったような澄まし顔で、当たり前のようにゴミを捨てていく様子がシンプルに描かれています。 そのため、同じ「生き物」でも、山の生き物たちの生命感と人間の冷血感が、ハッキリと異なる感情であることを読み取れる、自然環境破壊の問題を分かりやすく読者は感じることが出来るようになっています。 【丈太郎のひとりごと】 この絵本は、征三さんが実際に住んでいた、東京都西多摩郡日の出町にゴミ処分場が建設されたことを題材に人間の勝手さや愚かさをストレートに分かりやすく表現しています。 実際に征三さんは、ゴミ処分場建設の反対運動に力を入れて、その間は絵本を描くことなく、全国各地に車で向かい、ゴミ処分場建設の反対を訴える活動を熱心にしていました。 そして、そんな過酷の状況の中、征三さんは身体を壊してしまい、結局、ゴミ処分場は予定通り建設されてしまったのです。 ここ数年「SDGs」という言葉をよく耳にします。17の目標を掲げ、地球を持続可能なものにして、「誰一人取り残さない」社会をつくるために、2030年までに達成すべきゴールのことを指す言葉のようです。 一時期は、政治家などが皆んなスーツに「SDGs」のバッジをつけていましたが、果たしてどれだけの人が、その本質を認識し危機感を持って行動してのでしょう? 「SDGs」なんて言われる30年も前から征三さんは訴えてきたのです。僕は子どもたちに環境問題を教えるのであれば、この絵本が一番の教科書になると思います。 何故、今さら1993年に発刊された絵本を、僕が皆さんに紹介するのか?その答えはひとつだけです。この絵本に描かれていることが過去のことではなく、今でも平気に行われているからです。 表面上の「SDGs」という言葉を多用して、本質を理解していない会社や団体が、自分たちのクリーンなイメージをブランディングしているだけなのです。そんなことでは世の中は変わりません。 私たち人間はこれからの社会での生活において、もっと本質を知るべきであり、子どもたちの将来を真剣に考えるべきだと思います。 征三さんのストレートに表現されたこの絵本を多くの人に手渡していきたいと、僕は強く思います。
-
【絵本作家の高畠純さん大絶賛!】『オマヌケかぞくのたのしいいちにち』
¥1,540
SOLD OUT
ハリー・アラード /作 ジェームズ・マーシャル/絵 32P 小学館 【オマヌケ?そんなゆるい感じじゃありません!クレイジー家族の愉快な1日】 ある朝、パパ・オマヌケさんが目を覚ましました。なんだかウキウキする気分の様子です。 「おい、みんな。きょうは、とっても たのしい オマヌケなことが おこりそうな きが するぞ」 子どもたちはとても嬉しそうです。 家族みんなはシャワーを浴びながら、いつものように朝ごはんを食べましたが、たまごが流れていってしまいました。朝ごはんの後は子どもたちは家のお手伝い。弟のバスター・オマヌケは芝刈り機で絨毯を刈り、姉のべチューニア・オマヌケは部屋の諸物にスプリンクラーで水やりをしました。 柱時計が11回なれば、もう12時です。お昼の時間です。食事中バスターは足の指をしゃぶってますが、パパは行儀が良くなってきたと誉めます。ママ・オマヌケさんは何十匹の鶏を身体に巻きつけて新しい服を作りました。パパはとっても似合っていると誉めました。 その日の夜、オマヌケ家族のみんながテレビを見ていると「パチンッ」と突然部屋の中が真っ暗になりました。 「われわれは とうとう、しんでしまったんじゃないか?」 と、パパ・オマヌケさんが言いました。さて、オマヌケ家族は本当に死んでしまったのでしょうか? 古き良きアメリカンコミック調でポップに描かれた絵は、この破茶滅茶な家族の1日を楽しく彩っています。 【丈太郎のひとりごと】 絵本作家の高畠純さんは、たまにメルヘンハウスに遊びに来たりしてくれます。そんな時、この絵本を見つけて「こういうしょうもないない絵本って良いよなぁ!」と言って購入しました。 前にも同じようなことがありました。それは『だれがいちばん? がんばれ、ヘルマン!』(https://shop.meruhenhouse.com/items/84646467) でした。表紙を見て「こういうの良いなぁ」といわゆるレコードでいうところの「ジャケ買い」ってやつですね。 絵本に意味を求める人が多いけれども「意味なんてどうでも良いんだ!」って、純さんの絵本のセレクトの仕方、惹きつけられる様子を見て思いました。 そもそも絵本はアートでありながらもエンターテイメントなもの。楽しいだけで何が悪いってこと。もちろん、そこには作者の言わんとしている深い意味があるかも知れませんが、そこはどう受け取っても良いのです。 この絵本は1981年に発刊され、日本では2023年に翻訳されて発刊されました。この空白の40数年は何だったのか?そして、絵本に意味を求める人が多い中でこの絵本が今のタイミングで日本で発刊されたのは、まだまだ日本の児童書の未来は明るいぞ!って思いました。 本当に純さんの言う通り「しょうもないない絵本」です。それは極上の褒め言葉だと思います。
-
【みんな大好き!】「長新太の絵本の復刊&新作セット」
¥3,630
★『にゅーっ でたよでたよ』長新太/作 荒井良二/絵 24P 絵本塾出版 ★『ちへいせんのみえるところ』長 新太/作 32P 絵本塾出版 【長新太の復刊&新刊セット!】 『にゅーっ でたよでたよ』は、長新太の『ちへいせんのみえるところ』を読んだ荒井良二が「この絵本に出会えていなかったら、ぼくは絵本を作っていないと思う。」というぐらいの大切な絵本です。長新太が生前に残したラフに絵を描くというのは光栄なことだと思いますが、プレッシャーも大きかったはずです。 しかし、しっかりと荒井良二風にアレンジされていて、随所に長新太に対する敬愛を感じることが出来ます。 『ちへいせんのみえるところ』は、ここまで絵も文章も削ぎ落として繰り返しだけで絵本として成立している傑作の待望の新刊です。こんな絵本がもっと多くの子どもたちに手渡っていけば、きっと良い世の中になっていくんじゃないかな?って思ったりもします。 2作品の詳細は各商品ページにてご確認下さい。
-
【夢のコラボレーション絵本が誕生!】『にゅーっ でたよでたよ』
¥1,650
長新太/作 荒井良二/絵 24P 絵本塾出版 【奇想天外なことが繰り返される無限ループの中毒性アリ!】 大きなかばが画面一面に書かれています。そこには一言だけ「かばから」とあるだけ。そしてページをめくってみると、そこには「かばん」を鼻にぶら下げたかばがいます。 「かばんが にゅーっ ぶら ぶら ぶら」 綺麗なはなが画面一面に書かれています。そこには一言だけ「はなから」とあるだけ。そしてページをめくってみると、そこにははな(花)から(鼻)が飛び出ています。 「はなが にゅーっ くんくん くんくん いいにおい」 くもからくもが、はしからはしが、あめからあめがetc...。こうして次々に登場していきます。 長新太が生前に残した未発表のラフに、荒井良二が絵を描いた夢のコラボレーション絵本。 【丈太郎のひとりごと】 つい先日に復刊された長新太の『ちへいせんのみえるところ』(絵本塾出版) https://shop.meruhenhouse.com/items/104318385 の帯には、荒井良二がこう書いています。 「この絵本に出会えていなかったら、ぼくは絵本を作っていないと思う。」 そこまで尊敬していた荒井良二にとっては今作は夢のような制作だったと思います。併せて大きなプレッシャーも抱えていたことでしょう。 しかし、そこは長新太への弊愛を強く感じます。それは絵は確かに荒井良二そのものですが、しっかりと長新太のテキストを捉え自分のものにしています。長新太が今作においてどれぐらいのラフを残したのかは興味深いところですが、色の配色などはやはり長新太なのです。 長新太の絵本については多くを語ることは野暮なことだと思うので、これ以上の説明はいらないかと思いますが、長新太のスタンスはそのままに、荒井良二の絵によって蘇った長新太」を感じることが出来ます! 長新太ファンはもちろんのこと、荒井良二ファンも、そして全く初見の赤ちゃんからシニア層まで楽しめることは保証します。 「そうそう、これで良いんだよ!絵本ってこれで良いんだよ!」 僕は何度も読み返して思ったのでした。
-
【様々な「かたち」になる、限定スリーブ仕様!】『かたちえほん おはなさん』
¥1,760
わたなべ ちなつ/作 22P 小学館 【本は四角でなければいけないの?】 丘に咲く一輪の花。このおはなさんが想像する楽しい世界ってなに?空を飛ぶ?友達をつくる?たとえ失敗したって、落ち着いて深呼吸すれば大丈夫。 どのページを開いても、常に前後のページと絵がつながる。これまでにないユニークな姿・かたち・構造をもった絵本。本を開いた形もお話の内容とリンクします。 (以上、小学館ホームページから引用) 【丈太郎のひとりごと】 僕がメルヘンハウスに入社したのは2014年、今から11年前のことです。ある日、1通のメールがきました。差出人は美大の 大学院に通う学生からでした。内容は「今度、絵本を出版することになったので展示をさせて欲しい。」とのこと。 旧店舗のギャラリーは、メルヘンハウス企画がほとんどで、その合間にレンタルもしていました。「ではメルヘンハウスに来て頂いて、どのような内容の展示なのか話を聞かせてください。」と返信し、後日その学生が沢山の資料を抱えながらやって来ました。 その学生が後に絵本作家デビューする「わたなべ ちなつ」さんでした。 彼女は「かがみの絵本」シリーズ(福音館書店)のまだ製本されていない、『ふしぎな にじ』のダミーを持ってきて熱意を持って、やりたいことを語ってくれました。話を聞いて「これは面白そうだな!」と直感で思いワクワクしました。 しかし、その展示内容の大掛かりさから「これは相当な費用がかかるはずだ。」と思い、通常レンタルの場合はレンタル料を頂いていたのですが、彼女が学生であり、そして熱意に応えないわけにはいかないと思い、レンタル料は頂かないことにしました。 そして、搬入日は彼女の家族総出の大変なものでした。メインは等身大の『ふしぎな にじ』のオブジェクト。実際に子どもから大人まで、数ページめくることが出来て、しかもその中の「かがみ」に自身が写ることが出来るものでした。それ以外は細かなスケッチやらダミーなどでした。 そして、『ふしぎな にじ』と『きょうの おやつは』が出版されて、約20日後に展示はスタートしました。無名の絵本作家デビューしたばかりの展示に人が来るか心配でしたが、彼女を知らなくとも、子どもも大人も等身大の『ふしぎな にじ』に入って自分が「かがみ」に写っていることに大興奮!大盛況のうちに終わりました。 しかし、この2冊は当時の絵本相場と比較して「これで1500円(税抜)は高いなぁ。」と、「商品」としてはいかがなものか?と思っていました。 しばらくは視覚体験の絵本ということもあり「科学のコーナー」に置いたり「しかけ絵本」のコーナーに置いたりしてましたが、正直あまり売れ行きは良くありませんでした。 しばらくして、僕のプライベートでは翌年の6月に息子が生まれ、色々な絵本を読んだり、おもちゃで遊んだりしていました。息子が機嫌が悪くて泣いた時はいつも家の「かがみ」に息子を写すように見せると泣き止んで「かがみの中の自分」に必死に触ろうとしました。 そこで「もしかしたら!」と思いつき、『ふしぎな にじ』を見せました。 そしたら、家にある「かがみ」同様、自分が写っていることを不思議に思ったのか、ヨダレだらけの手で『ふしぎな にじ』を触ることをとても好みました。 息子からヒントを得た僕は、次の日から『ふしぎな にじ』と『きょうの おやつは』(共に福音館書店)を「赤ちゃんコーナー」に移動させて、自分の実体験を元にお客様に説明したら、これがお当たり!瞬く間に『ふしぎな にじ』と『きょうの おやつは』が爆発的に売れ出しました。 購入されたお客様は、我が子の反応が良くて、しかもデザイン性も高い!そして、今までに見たことがない絵本として「出産祝い」の定番にするお客様も沢山いらっしゃいました。 その後の「かがみの絵本」シリーズが大ブレイクしたのは、知っている方も多いと思います。 そして、今回の『かたちえほん おはなさん』は、以前の「しかけ絵本」とは全く異なるもので、これまたビックリしたのですが、形も変形のため「本棚に置きにくいなぁ」と扱い方に頭を悩ませました。 しかし、文章がとてもシンプルで想像力が掻き立てられる「余白」が十分にあり、自分の心がどんどん自由にポジティブに解放されていくようでした。それは考え抜かれた「しかけ」のクオリティの高さが読み手に「時間をつくる」アシストをしているからだと思います。 彼女の作品は「しかけ」ばかりが注目されがちですが、画力も相当なもの。「しかけ」などなくとも、普通の絵本としても十分に見応えのある絵を描いています。 子どもは勿論のこと、大人の心にも響くただの「しかけ絵本」ではありません。それはこの絵本を開けばきっとわかるはず! ギフトにもオススメです!
-
【毎回、新作が傑作!】『じゃないものさがし』
¥1,540
中垣ゆたか/作 32P ポプラ社 【とてもシンプルだけども遊び心満載の間違い探し!】 「ぼうし「じゃないもの」は、どれだ?」 「めがね「じゃないもの」は、どれだ?」 「タイヤ「じゃないもの」は、どれだ?」 こんな感じで、約20〜30のイラストから「じゃないもの」を探していきます。「じゃないもの」が2つの時もあるし、3つの時、4つの時と、そのシチュエーションによって「じゃないもの」の数も変わっていきます。 たまにページ全体に描かれた絵の中から「じゃないもの」を見つけ出すのは至難の業です。 緻密にコミカルに、そしてポップにカラフルで描かれた絵での「じゃないもの」は何度読んでも楽しめます! 【丈太郎のひとりごと】 絵本作家デビューから10年ちょっとで、ナント!50作品以上も絵本を描いている中垣ゆたかさん。個人的にも親しく、毎回新作が出る度に送ってきてくれます。 この絵本も家のポストを開けてレターパックが入っていたら「ああ、中垣さんからだな!」とニンマリして、早速読んでみて直ぐに電話します。 「今回も最高じゃん!」と言うと「そうなんですよ!毎回最高傑作なんですよ!」と長電話が始まるのです。その電話の中での制作秘話や、どうやって子どもたちに届けようか?など、色々真剣な話をしながら「あっ、そう言えばあの映画観た?」とか脱線していくのが毎回のお決まりごと。 「仲が良いから!」とエコひいきすることなく、傑作です!毎回緻密にページ全体を描き込むスタイルから、個々のキャラクターが際立つように、今まで「ゴチャゴチャしていて見にくい!」と思っていた人へもオススメです!抜き加減と今までと同様描き込むバランスが絶妙です。 このような探し絵(間違い探し)は一回読んで見つけたら終わり!ってことが多いですが、今作は見つけた後でも細部の描き込みなど見どころ満載! 親子で一緒に「じゃないもの」探しをしたら、きっと楽しい!というか大人は子どもに勝つことが出来るか? もちろん、子どもだけでも楽しめます!長時間のドライブ、病院の待ち時間などには持ってこい!の絵本です。
-
【読んだら何故かスキップをしたくなる⁉︎そして、心が軽やかに。】『テーブルのしたになにがいる?』
¥1,980
アラン・アールバーグ/作 ブルース・イングマン/絵 とたにようこ/訳 40P 徳間書店 【テーブルの下に続々と生き物たちが現れたらどうする?】 あるところにエルシーという名前の女の子がいました。エルシーは猫と犬とパパとママとバンジョーという名前のお兄ちゃんと住んでいて、エルシーはみんなのことが大好きです。 ある朝、パパとバンジョーが外で車を洗っていると、エルシーが家から出てきて2人に大きな声で「テーブルの上でゆで卵が走っていて、テーブルの下にはものすごくでっかい灰色の、なにかがいる!」 みんなで家の中に戻ると、ゆで卵は逃げた後、そしてテーブルの下には象がいました。 と言うわけで、象も一緒にみんなでみんなで車を洗いました。 ママとバンジョーが買い物から帰ってくると、エルシーが家から出てきて2人に大きな声で「テーブルの下に、おっきくて茶色くてぴょんぴょんしたお腹にポケットにがある、なにかがいる!」 みんなで家の中に戻ると、テーブルの下にはカンガルーとカンガルーの赤ちゃんがいました。 と言うわけで、みんなで車に荷物を運びました。 今度エルシーが冷蔵庫の中で見つけたのはペンギンが2匹いました。 そして、みんなでお茶をしながらママがみんなにある提案をしました。それはみんなで海でキャンプをすることでした。と言うわけで、明日の朝早くから海へキャンプに行くことにしました。 海でパパとバンジョーがバーベキューをしていると、エルシーが駆けてきて「テーブルの下に、、、、、。」 ピンクや黄色が背景色として、そこに人や物や生き物たちが軽やかに躍動感溢れる光景を色鮮やかに描かれているため、とても明るい気持ちで次にテーブルの下に現れるのはなんだろう?とページをめくるのがワクワクする絵本です。 【丈太郎のひとりごと】 様々な生き物がテーブルの下に現れるなんとも奇想天外のユーモアたっぷりのお話ですすが、現れて終わるのではなく「と いうわけで、」と次々に場面が展開する楽しさが目一杯に描かれています。 絵も完璧に描写しておらず、良い意味でラフに描かれているため、その効果で軽やかさを感じます。しかし、構図はしっかりとしているので、とても見やすく親しみも感じます。 あり得ないことがテーブルの下で次々と起こる、繰り返されるリズムの気持ち良さが心をワクワクさせ、軽やかなウキウキな気分になってしまい、なんだかスキップをしたくなような絵本です! 実際に僕はお客さんのいないメルヘンハウスで軽くスキップをしてみましたが、子どもの時のようにリズム感良く軽やかにスキップ出来ず、ちょっと落ち込みました、、、。それは誰にも見られたくない光景でした。 さぁ、皆さんもこの絵本を読んで軽やかなスキップに挑戦してみてください!きっと子どもたちには勝てなと思いますが、、、。
-
『ほんやくすると』
¥1,760
斉藤倫・うきまる/作 くのまり/絵 32P ブロンズ新社 【「ほんやく」しなくても、分かりあえることがあったりするのです。】 生まれたれの赤ちゃんに犬が自分のしっぽを振る意味を教えます。 ほんやくすると、「とっても うれしい!」ってこと。 泣いている赤ちゃん、お腹がすいた?眠たい?おしっこ?ほんやくすると「おかあさーん!」。 ボロボロになったぬいぐるみ、ほんやくすると「おきにいり!」。 カチカチと響く時計の音、ほんやくすると「いま おんなじ ときを すごしている」。 誕生日の時のろうそくの火、プレゼントの包みが大げさなのは、しとしとと雨の音、それぞれの翻訳があります。 丁寧に選ばれた言葉だけが文として書かれていて、その言葉と一緒に呼吸するように、シンプルに、時には大胆に描かれた細部に至るまで丁寧に描かれた絵から、生命の美しさ、生きる喜びを感じます。 【丈太郎のひとりごと】 メルヘンハウスでも人気の『のせのせ せーの!』(https://shop.meruhenhouse.com/items/84216122)のトリオが描いた、優しく柔らかいお話です。 詩人の斉藤倫さん、絵本作家のうきまるさんが丁寧に紡ぎ出した言葉を、イラストレーターのくのまりさんが丁寧に描く世界観は『のせのせ せーの!』同様、とてもシンプルながらも奥深さを感じます。 犬の言葉が次々と「ほんやく」されていきますが、最初は生まれたばかりの男の子の赤ちゃんの成長し少年になるにつれ「ほんやく」がシンプルになっていきます。 そして、会話となり、やがて言葉がなくても通じ合う少年と犬の関係がとても素晴らしく思います。 僕も犬を飼っていたので、この気持ちがとても分かります。自分が成長していくことにより、犬が言わんとしていることが自然にわかったり、時には的外れな解釈をして怒らせたり、犬と人間の関係を超越した「親友」となっていきました。 少し前までは犬や猫はペットでしたが、今では友であり、親であり、家族の一員なのです。 なんだか僕と犬との様々な思い出が一気に蘇り、今は会うことが出来ない犬を想いセンチメンタルな気分にもなりましたが、きっと向こうの世界でも楽しくやっているだろうと、いつか再会できる日を楽しみにしながら絵本を閉じました。
-
【待望の復刊!「長新太」はやはりすごい!】『ちへいせんのみえるところ』
¥1,980
長 新太/作 32P 絵本塾出版 【一画面のみで繰り返される「でました。」だけでこのクオリティ!深読みせずにこの世界観に飛び込んで楽しもう!】 まず目に飛び込んでくるのは画面一面に描かれた草原が広がる地平線です。ページをめくってみると、 「でました。」 と、男の子の顔が草原からひょこりと顔を出しています。次のページをめくってみると、 「でました。」 と、今度は像の顔が草原からひょこりと顔を出しています。次のページをめくってみると、 「でました。」 と、今度は噴火する山が草原から大きく出ています。次のページをめくってみるとetc...。 こうやって、飛行船、ペンギン、クジラ、船などが出ていき最後は、、、。 画面一面に描かれた草原が広がる地平線で繰り広げる「でました。」の数々。描かれている色のトーンが長新太には珍しくトーンが落ち着いてますが、内容は「長新太ワールド」炸裂な絵本です。 【丈太郎のひとりごと】 1978年エイプリル・ミュージック、1998年ビリケン出版より刊行され、しばらく手にすることが出来なかった長新太の名作がこの度めでたく復刊しました。 画面一面に描かれた草原が広がる地平線をベーシックに「でました。」と予期せぬものが沢山登場します。このミニマルな世界観は、まるで音の動きを最小限に抑え、パターン化されたフレーズを反復させる「ミニマル・ミュージック」と呼ばれる現代音楽というジャンルの音楽に、とても似ています。 分かりやすいところで言えば、これはテクノミュージックですね!ループ(繰り返し)される「ドン、ドン、ドン、ドン」と4つ打ちされるバスドラムのうえで同じフレーズが繰り返され、徐々にそのフレーズパターンが変化したり、他のフレーズがフェードインしてきたり、そして中盤のシンプルな音だけで構成されるブレイクで一気に盛り上がる! この絵本にもそんなブレイクがあったりして、意外とテクノを聴きながら読んでいくと素敵な「マリアージユ」が誕生しそうです。 もちろん、音などなく静かにこっそりとひっそりと自分の世界に閉じこもって「えへへ」と楽しむのも良い! 子どもたちにウケるのは必至!キャラクラー性を重視した絵本に慣れている子どもたちには、とても新鮮に感じる事でしょう! もうこれ以上の説明は野暮なのでこの辺で。 あっ、4月21日には、長新太が生前に残した未発表のラフに荒井良二が絵を描いた『にゅーっ でたよでたよ』(絵本塾出版)が刊行されるようです!こちらも楽しみです! 遂に世の中が長新太を求め出した予感を感じます。長新太の作品が広まれば世の中が変わると言っても過言じゃないです! まずはこの絵本を楽しんでください!
-
『なみのいちにち』
¥1,980
阿部 結/作 40P ほるぷ出版 【「さん ささーん さん ささーん」と波のなか、それぞれの素敵な一日そこにはある。】 「あさだ! あたらしい たいようが かおを だして、わたしのいちにちが はじまる」 ねぼすけの鳥たちも海へ漁にでる人も、それを見送る親子は波打ち際で「さん ささーん さん ささーん」と波の音を聞きながら遊びます。おにごっこしている子どもたちや、恋人が波打ち際で楽しい時間を過ごしています。 昼下がりになれば、カモメの鳴き声、船の音、海水浴をしてる音、砂遊びを音など色々な音で賑やかになります。 何かに思いふけるのも波際はなかなか良い場所です。そして、散歩をしている人との出会いでから、その人の想い出にも触れたりもします。 夕方になり日が沈み、月が顔を出したら今夜もおきゃくさんがやってきて、夜の海も賑やかなになるのです。 色々な人や生き物にとって、それぞれの情景が、「さん ささーん さん ささーん」と波の音を耳にしながら、美しくあるのです。 淡く優しい色合いで、輪郭線も緩く、目の前に広がる海の景色と一体化するよう描かれた絵から、全ての生命たちの物語を愛おしく感じます。 【丈太郎のひとりごと】 波が運んできてくれる様々な物語がとても美しく描かれています。それは賑やかなことであったり、センチメンタルなことであったり、不思議なことであったり、色々な表情を見せてくれます。 僕は大学生時代に沖縄に住んでいましたが、この絵本を読むと沖縄の海のことを思い出します。しかし、同じ海でもエメラルドグリーンな沖縄の海は、ここで描かれている海とは違う印象を持ちます。それは何故だか?なんと表現したら良いのか?明確な答えは未だ出ないままです。 おそらくこの絵本で描かれている海は、南国特有なカラッとした明るいイメージが先行する海ではないのです。だから、お話もしっとりとしているように感じるかもしれません。 ちょっと心が乱れてしまっているなぁなんて思う時に手に取りたい絵本です。心が穏やかになっていくのを実感することでしょう。 みんなでワイワイと読むのではなく、一人で静かな場所でこの絵本を開いて読むことをオススメします。また、子どもと一緒に一日が終わる静かな夜にゆったりと読めば、きっと素敵な想いを分かち合うことが出来ることでしょう。 海の絵本だから夏にしか読めないということもありません。どの季節でも頭の中に海や「さん ささーん さん ささーん」と波の音は優しく聞こえてきます。 そんな不思議な魅力を持った絵本です。
-
【「春の絵本」を探している保育園、幼稚園の先生たちにストライクゾーンど真ん中!】『20ぴきのピクニック』
¥1,650
SOLD OUT
たしろちさと/作 32P ひかりのくに 【春のピクニックは特別!今すぐにでもピクニックへ行こう!】 人間の家の床下にはねずみの家があって、おとうさん、おかあさんと18匹の子ねずみと全員で20匹の大家族です。 人間の家から「きょうは たのしい ピクニック」と声が聞こえてきました。あれあれ、耳を澄ますと床下のねずみの家からも「きょうは たのしい ピクニック」と小さな声が聞こえてきました。 「ピクニックって なあに?」と子ねずみ中にはピクニックに行ったことがない子もいます。 お弁当を皆んなで作って、さあ出発です。道中、気が先走って走っていく子ねずみや、転んでしまった子ねずみもいます。 さあ、つきました。公園に着いたら早速、たんぽぽを吹いてみたり、大葉子の草で綱引き、おとうさんがつる草で作ったブランコで遊んだり、おかあさんは花輪の作り方を教えたり、花輪の電車で藤の花のトンネルをくぐったり、春にしか出会えない草花で思いっきり楽しみます。 そして、いよいよお待ちかねのおべんとうの時間です。みんなで作ったおべんとうを春の公園で食べるのは格別です! 春の陽気がとても丁寧に優しく描かれているため、この絵本を読むとすぐにでも「春のピクニック」に出かけたくなります。 【丈太郎のひとりごと】 この絵本の作者であるたしろちさとさんの魅力は、何と言っても細部に至るまで丁寧に優しい色合いで描かれた絵と、ストーリーの中に入りやすい「余白」を感じる最小限に留めたテキスト( 文章)にあると思います。 この絵本は、たしろちさとさんの最新作です。僕は『みんなのいえ』( https://shop.meruhenhouse.com/items/84164157 )がとても好きで、たしろちさとさんの絵本デビュー作として2001年に発表され、新たに描き下ろされた絵も加わり、二十数年の時を経て再度2023年に発刊されたのです。 ボロボロの廃墟に次々と旅人が現れ、それぞれが家を直していく様子が断面図で描かれていて「断面図好き」の僕にはたまらない絵本で、そこから、たしろちさとさんの事は、数々の絵本で知っていたのですが、一気にファンになりました。 この絵本にもそんな家の「断面図」が少しだけ描かれており、嬉しく思っています。 何はともあれ「春のピクニック」の心地良さがとても伝わってくる絵本で、春ならではの草花が登場することで季節感を存分に味わうことができます。 絵も伸びやかに大きく描かれているため「春の絵本」などを探している保育園や幼稚園の先生方の求めている要素が詰まっているので、園で子どもたちと読むことに適していると思います。 もちろん、ご家庭でも子どもと一緒に読んで、ピクニックに出かけるのも良いでしょう! 春爛漫のオススメの絵本です!
-
【あらゆるところに散りばめられた春のディテールにトキメキを感じる!】『はるのワンピースをつくりに』
¥1,430
石井睦美/作 布川愛子/絵 32P ブロンズ新社 【ときめき、かわいさがたくさん!】 春になりウサギのさきちゃんは、森へと向かいます。行き先は仕立て屋さんのミコさんのお店。 春になったので、ワンピースが欲しくなったのです。ミコさんはさきちゃんからどんなワンピースが良いか聞きます。 春の花ってどんな花? 春の色はどんな色? 春はどんな音? ポケット、ボタン、飾り付けをさきちゃんが選び、ミコさんがワンピース作りに取り掛かります。 さあ、どんな素敵なワンピースが出来上がるのでしょう? 細部に至るまで細かく描かれ、全体的に春をイメージしたような明るい色使いが印象的です。 【丈太郎のひとりごと】 この絵本を読んで、子どもたちがウキウキ、ワクワクする姿が想像できます。 服に興味を持ち出した子どもたちにオススメの絵本です。 そして、さきちゃんとミコさんのやり取りは、メルヘンハウスにやってくる子どもたちと僕のやり取りによく似ています。子どもたちの好きなものや最近興味があることを聞いたりしながら、子どもたちに合った絵本を僕がセレクトしている光景と重なります。 だからか、この絵本を読むと、僕はさきちゃんとミコさんのやり取りに共感を覚えるのです。 絵がとても鮮やかで瑞々しく鮮やかで、春の心地良さをふんわり爽やかに描かれているため、読んでいるとなんだかワクワクして緑の多い公園に出かけたくなります。 そして、ワンピースと言えば『わたしのワンピース』(こぐま社)が代表的なロングセラーの絵本ですが、『わたしのワンピース』が雰囲気を重視したファンタスティックなシンプルな絵本であるとすれば、この絵本は「春とはどんな季節?」と具体的に考えながら、ワンピースが作られていく工程が楽しく描かれています。 そのため、服の色々なパーツなどが描かれたページでは、子どもたちはどれが良いか迷ってしまい、なかなか先のページに進めないかも知れませんが、それも春のゆったりとした時間として味わうのも良いかも知れませんね! この絵本は春夏秋冬のシリーズ絵本なので、子どもたちには季節ごとにさきちゃんとミコさんのやり取りを楽しんで欲しいと思います! もちろん大人、特に女性はあらゆるところに散りばめられたディテールに、トキメキこと間違いないでしょう!
-
【フラットな気持ちでこの絵本を開いて欲しい!】『あいであ』
¥1,650
こうの あおい/作 32P アノニマ・スタジオ 【「余白」がたっぷりの絵本の世界に入って遊んだり、考えたり、、、。】 朝が来て、猫や鳥たちが「なにして あそぶ?」と、ひなたぼっこしたり、かくれんぼをしたりして遊びます。 そこへ大変なことが!「なにがあったの?」何が大変かは分かりませんが、とりあえず急いでその場から逃げます。そして、そこから「どうしようかな?」と考えて「そうだ!」と思いつきます。 さて、その思いつきとは? 沢山の種類の色が使われていますが、決してカラフルではなく全体的に落ち着いたトーンで、センス良く「具体的」なものはしっかりとした構図で、「抽象的」なものは思いっきりカラフルに描かれており、そのバランスが絶妙です。 【丈太郎のひとりごと】 この絵本は約50年ほど前に海外の出版社の編集者の依頼を受けて制作していたものが、当時は日の目を見ることなかった作品を、長い年月を経てストーリーやテーマを練り直して制作された絵本のようです。 それをこの絵本の「あとがき」の解説で読んで、僕は「だからか!」と腑に落ちました。はじめて絵を見た時は「若手作家さんのとてもセンスの良いデザイン性の高い絵だなぁ。」と思ったのですが、作者の「こうの あおい」さんは、なんと1936年生まれ!イラストレーションはもちろん、テキスタイル、カーペット、絵本、玩具などの手がけているようです。 僕が腑に落ちたと言うのは、最近の絵本の傾向として「うるさい」ものが多いのです。それはストーリーが長文かつ複雑だったり、絵もぎっしり「綺麗」に目がチカチカするように描かれており、特にキャラクター性の強い絵本が支持されています。それらを全て否定する訳ではなく、あくまでもその類の絵本の傾向が多過ぎるとのことです。 しかし、この絵本は文章も「ひとこと」ずつ進んでいきます。それも内面を書いたものではなく、その「状況」を言葉で表現しているだけ。絵は落ち着いたトーンの色遣いで目も疲れず、隙間だらけ。気がつけば自然に絵本の中に入り込んで、絵本に出てくる仲間たちと一緒に考えたり、行動したりしている自分がいたりします。 今昔を比較しても仕方がないことですが、昨今の絵本はとにかく「余白」がないものが多いのです。文章も絵も情報量に溢れ返り、読者が絵本の世界観に入れないような、何だか作者の考えを押し付けられている「教科書みたい」なものが増えてきた気がします。 恐らくそれらは、世の中的に「結果主義」、「効率化」、「時短」の進む中で、より「分かりやすい」ものが好まれている傾向にあるから仕方ないことかも知れません。 それに比べて昔(どの時代で区切るかは定かではない)の絵本にはたっぷりの「余白」があります。読者が絵本の世界に入り楽しめるようになっています。その代わり、昨今の絵本のように「分かりやすい結果」がありません。エンドユーザーとなる読者が自由に解釈して、日々の生活の中に溶け込ませながら「こたえ」を見つけるものだと思います。中には未だに「こたえ」が見つからない絵本もあります。 そう、絵本は「こたえ探し」ではないのです! この絵本には「余白」がたっぷりあります。様々なものを削ぎ落とした「引き算の美学」を感じる絵本です。 フラットな気持ちでこの絵本を開いて見てください。きっと、自分が絵本の中にいるように感じるはずです。 もちろん、純真無垢な子どもたちならフラッと自由にこの絵本を出入りすることができるでしょう!
-
【気持ちの良い朝を迎えるために寝る前に読みたい絵本!】『おはよう』
¥1,650
SOLD OUT
及川 賢治/作 32P 講談社 【さんかく と しかく と まる が そろうと なんとなく すごいこと が おこっているのです】 お父さんは読みかけの絵本を手に持ったまま寝てしまいました。横向きになったお父さんの大きな顔が目の前に広がっていて、鼻からはいびきが聞こえてきます。 僕は上を向いて仰向けになり、変なシミがあり座った猫の似ています。それから僕はうつ伏せになり、四角い枕に顔をつけて息を吸いました。そして、今度は横向きになり窓の方を向きました。 よく見ると窓に大きな三角のものがあります。近づいてみるとお父さんの鼻でした。僕は四角い枕を顔が突き抜けていました。 「あとは まるを まつだけだ」 三角は言いました。三角と四角の僕は並んで窓に座って、まるが来るのを待っています。 空がだんだんと明るくなって夜明けが近づいてきました。そして、まるがやってきました。 まるの正体とは? クレヨンのような粗い線とベッタリと塗られた風景が上品にマッチングして、色の配色がとてもセンスよく、夜から朝を迎える光景が温かく描かれています。 【丈太郎のひとりごと】 大活躍のユニット「100%オレンジ」の及川賢治さんのソロ作品です。「100%オレンジ」は僕がまだ20代の頃(25年ぐらい前)に突如出現し、あらゆる雑誌や広告媒体でよく見かけた人気のユニットです。 その頃から、オリジナリティに溢れた画風で、とても注目を浴び大活躍をしていました。 そんな「100%オレンジ」ですが、イラストレーションばかりが注目されている中で、実は絵本も2000年代初頭からコンスタントに出版されており、赤ちゃん絵本から大人向けのアート性を重視した絵本までジャンルも幅広く、毎回、新刊が出る度に「最高傑作!」と思えるような絵本で、今でも進化し続けています。 画風はパッと見たら「これは100%オレンジだな」とオリジナリティが高い絵本が多いですが、2020年に発刊された『ここは』(河出書房新社) https://shop.meruhenhouse.com/items/84131535 では、小説家・詩人として活躍されている最果タヒさんのお話に今回と同じく絵を「及川賢治」として描かれて意いるのですが、それは今までの「これは100%オレンジだな」と分かる絵ではなく、最初は及川賢治さんが描かれてた絵とは思いもよらず、素晴らしいものでした。 そして、今作はお話も絵も及川賢治さんが担当し、100%オレンジらしい絵で描かれているのですが、ストーリーがとても良く書かれています。お父さんが寝静まった後の「ぼく」が一人で見ている視線の先に何があるのか?そして、「ぼく」だけが体験する不思議なファンタスティックな夜をシンプルなテキストで表現されています。シンプルが故に読者がその世界観に入り込める「余白」が沢山あり、「ぼく」と三角と一緒「まる」を待つ夜を過ごしたいと思うことでしょう! 寝る前に読むのがオススメです! 新作が出る度に、僕らを驚かせ喜ばせてくれる100%オレンジはこれからも大注目です!
-
【オシャレでポップで上品な「うんち」絵本セット!】
¥2,750
1、『うんちっち』ステファニー・ブレイク/作 ふしみ みさを/訳 31P あすなろ書房 【「うんち」の絵本なのに「茶色」が使われていない!何故?それは、、、。】 真っ赤なページにうさぎのこだけがいて、そこにはこんな一文が。 「むかし むかし あるところに、うさぎのこがいました。うさぎのこは ことばを たったひとつしかいえませんでした。それは・・・・・・」 次のページをめくると、真っ青なページにうさぎのこが笑って一言、 「うんちっち」 朝、お母さんがうさぎのこに起きるように言っても「うんちっち」。お昼、お父さんがうさぎのこにほうれん草を食べるように言っても「うんちっち」。夜、お姉さんがうさぎのこにお風呂に入ろうと呼んでも「うんちっち」としか答えません。 ある日、オオカミがやってきて「ぼうやを たべても いいかい?」と、うさぎのこに聞いても答えは「うんちっち」。ついにオオカミに食べられたうさぎのこ。一体この先どうなることでしょう? 各ページのベーシックとなる色は、どのページもカラフルな原色が使われており、絵も画面いっぱいに大きく描かれているため、2才さんぐらいから楽しむことが出来て、読み聞かせなどでも大活躍しそうです! 2、『うんちしたのはだれよ!』ヴェルナー・ホルツヴァルト/作 ヴォルフ・エールブルッフ/絵 関口裕昭/訳 24P 偕成社 【世界一、品のあるうんちの絵本!】 もぐらが自分の頭上にうんちを落とした犯人を探す為に色々な動物に、「ねえ きみ、ぼくの あたまに うんちおとさなかった?」と尋ねる。 どの動物も自分のうんちをもぐらに見せて、頭上のうんちと比較しながら違いを検証し、最後にはとうとう犯人を見つける。 「きみ」、「ぼく」などの言葉遣い、冷静な判断と行動、それらはとても紳士的な振る舞いである。しかし、もぐらの頭上には最初から最後まで、常にうんちが載ったまま!そのギャップが極上なユーモアを醸し出している。 とてもお洒落な洗練された文と絵で描かれた本作では「うんち」は汚いものだと感じない。 【丈太郎のひとりごと】 オシャレに興味のある方なら「モンドリアン」、「Bauhaus」という単語を耳にすれば「おっと!」と立ち止まることでしょう。 見てください!このモンドリアン柄をベーシックに「うんち」の絵本が2冊並んでいます。どうですか?下品に見えます?異臭をイメージしますか?そんなことは全く感じないですよね!むしろ馴染んでいると思いませんか? 何故ならこの2冊の「うんち」の絵本は、オシャレでポップで上品だから。 『うんちっち』は、思いっきりカラフルでポップセンスが炸裂し、一方『うんちっち』の主人公もぐらは自分の頭に「うんち」をした犯人を気品を漂わせる風貌と言葉使いで探しますが、ずっと最後まで「うんち」が頭に載ったままの上品なブラックジョークが効いています。 子どもは下品なものが好きなんです。それは止めることができない人間の「さが」なのです。そして、親ともなれば出来るだけ下品なものから遠ざけたいと思いますよね?しかし、それは残念ながら無理です。 解決策があるとすれば、下品に見えない、感じないものを子どもへ手渡すことです。 この2冊はそんな親のエゴを満たしてくれます! そして子どもと一緒に読んでみてください! きっとエレガンスな「うんち」絵本を体験をすることでしょう!
-
【腐り切った現代社会へ、50年以上前からの贈り物!】『しばてん』
¥1,650
田島征三 /作 32P 偕成社 【この不条理を僕らはどう受け止めるべきか?】 むかし土佐に住んでいたとされる、すもう好きの妖怪「しばてん」。みなしごの男の子・たろうは、すもう大会で、あらゆる人を投げ飛ばしたことから、しばてんの生まれかわりではないかと疑われてしまいました。 そして、村の長者の「こんな きみわるい ばけものは、村にゃ おけん。」という言葉に同意した人々によって追いやられ、山奥でひとりで生きるようになります。 月日は流れ、人に会いたくなったたろうが山をおりると、村は日照りによって困窮し、人々は飢えにあえいでいました。そんななか、長者だけが家に米や食べものをたくわえているのを知ったたろうは、長者を投げ飛ばし、人々を飢えから救います。 みんなはふたたびお腹いっぱい食べられるようになり、たろうはまた村に住むようになりました。しかし、騒ぎをききつけた役人がやってきて、長者の米俵をぬすんだのは誰か、と村の人々を問い詰めて……。 ページごとに異なる色使いで、大胆に描かれた絵からは、たろうや村の人々のほとばしる感情があふれます。人間の業について、深く考えさせられる一冊です。 (出版社の紹介文から) 【丈太郎のひとりごと】 いつもはあらすじや特徴など、僕自身が書いて皆さんに紹介していますが、出版社(偕成社)の書いた紹介文がとても的を得たものであったので、そのまま掲載することにしました。 僕が皆さんに伝えたいことは、この本の「あらすじ」ではなく「この絵本とどう向き合っていくべきか?」と言うことです。 この不条理なお話を描いたのは、80才半ばを超えた今でも創作意欲が留まるどころが、よりアクティブに、絵本だけではなく、あらゆる手法、素材で芸術を生み出している、絵本作家というジャンルでは括りきれない「芸術家」と紹介した方が適切と思われる田島征三。 若き20代の学生時代に手刷りで創った最初の絵本がこの『しばてん』。それから『ふるやのもり』(福音館書店)という昔話の絵を手掛けたのが、メジャー(一般流通すると言うこと)デビュー作。こちらも当時は「こんな汚らしい絵はなんだ!」などと、当時は批判されたらしい。 そして、メジャー2作目がこの『しばてん』である。 「絵本界の重鎮」として、児童書業界からは一目置かれているうえ、大作家過ぎて恐れ多く近寄れないと言う人もいるだろうけど、そんな田島征三のことを僕は「征三さん」と気安く呼んでいる。 僕が「征三さん、あのさぁ〜」なんて話をしているところ目撃した人からは「なんて失礼な奴なんだ!」と思われたり、ビックリしたりされるけど、僕にとっては幼少時から知っている「お父さん(メルヘンハウス創業者の三輪哲)の変わった友達の一人」でしかないのである。なので、今更祭り上げるような接し方はしない。 そんな35才も離れた若造(と言っても50才、、、。)にも、征三さんは僕の話に真剣に耳を傾けて同じ目線で話をしてくれる。だから僕もお構いなしに新刊が出ると連絡して「作品は良いけど帯に書いてあることが気に食わない!」などと平気で言ってしまうのだ。 正直、幼き頃の僕にはこの『しばてん』という絵本に、そんな思い入れのある絵本ではなかった。「何かおどろおどろしい怖い絵本」と言うぐらいの印象であった。 しかし、ここ10年ぐらいでやっとこの絵本の凄さに気付いたのだ!もう50年以上前1971年に描かれたこの絵本は「今」でも生きている。いや「今」の陳腐した現代社会の闇を予言するかのように描いているではないか! 『しばてん』には「あとがき」があり、それは若き田島征三の決意表明のように思う。そんな「あとがき」の一文にこう記してある。 ”ぼくがひそかに期待していることは、子どもたちが、その成長の過程で、あるいは青年になってからでも、絵本『しばてん』が、かれらの心の中で発酵して、「ふっ」と、「あの絵本の作者がいおうとしたことは、このことだったのか!」と、心に沈んでくれることです。” そう、まさに僕がここ10年ぐらいで感じたことが書いてあるではないか! この心に沈んだことを僕はどう表現すべきか?とても悩んだ。悩んだ挙句、僕の中でひとつの答えが見つかった。 「この『しばてん』を子どもたちに手渡していくこと。」 正直、今までは自信がなかった。この『しばてん』に対して深く問われたらどうしようと怯えていた。それは後の征三さんの『とべバッタ』(偕成社)に描かれている臆病なバッタのようだったから。だけど、今なら僕はどんな天敵が現れようと、自信を持って『しばてん』を責任持って子どもたちに手渡せる。 本当に大人になると不条理なことが多い。人間関係も「ウィンウィンな関係で、、、。」なんて互いの利害関係がマッチングする時だけの軽いものや、今の日本は一部の政治家や大企業上役や資産家など「お偉いさん」たちに有利になるようなシステムであり、その「お偉いさん」たちの不正や不祥事も正しく裁かれることなく、いつの間にかフェードアウトしていく。そして、それを「善し」としている僕を含めた一般市民の罪も大きい。 本当にこのままで良いのか?征三さんの投げかけに、僕らはどう応えていくべきであろう?僕ら大人は今一度、自分の足元を見つめ直して、より人間らしく正しく生きていくべきではないだろうか? 僕はこの『しばてん』を全力で子どもたちに手渡していく。さあ、皆さんはどうしますか? Punks Not Dead!
-
【こんなオシャレな「うんち」の絵本は見たことない!】『うんちっち』
¥1,320
ステファニー・ブレイク/作 ふしみ みさを/訳 31P あすなろ書房 【「うんち」の絵本なのに「茶色」が使われていない!何故?それは、、、。】 真っ赤なページにうさぎのこだけがいて、そこにはこんな一文が。 「むかし むかし あるところに、うさぎのこがいました。うさぎのこは ことばを たったひとつしかいえませんでした。それは・・・・・・」 次のページをめくると、真っ青なページにうさぎのこが笑って一言、 「うんちっち」 朝、お母さんがうさぎのこに起きるように言っても「うんちっち」。お昼、お父さんがうさぎのこにほうれん草を食べるように言っても「うんちっち」。夜、お姉さんがうさぎのこにお風呂に入ろうと呼んでも「うんちっち」としか答えません。 ある日、オオカミがやってきて「ぼうやを たべても いいかい?」と、うさぎのこに聞いても答えは「うんちっち」。ついにオオカミに食べられたうさぎのこ。一体この先どうなることでしょう? 各ページのベーシックとなる色は、どのページもカラフルな原色が使われており、絵も画面いっぱいに大きく描かれているため、2才さんぐらいから楽しむことが出来て、読み聞かせなどでも大活躍しそうです! 【丈太郎のひとりごと】 アメリカ生まれ、フランス育ちの作家が描く、世界で一番カラフルな「うんち」の絵本です! そして、この絵本の最大の特徴はなんと言っても「うんちの色」=「茶色」が通用しないこと。 何故なら、この絵本には「うんち」そのものが描かれていない「うんちの絵本」だからです! 偏見かも知れませんが、作者の「フランス育ち」というだけで「うんち」という単語から悪臭のイメージは膨らむことなく、むしろ清潔感のあるオシャレな言葉に聞こえてしまいます。 子どもは「うんち」とか好きですよね?でも、大人としては、あまり下品なものを見せたりしたくないですよね?そんな時にこの絵本は大活躍! しかし、影響の受けやすい純粋な子どもたちは、この絵本をゲラゲラ笑いながら読んだ後は、どう話しかけても「うんちっち」と答える可能性大なので、そこはお気をつけください!
-
【tupera tuperaの隠れた名作を発掘!】『アニマルアルファベットサーカス』
¥1,980
tupera tupera/作 32P フレーベル館 【ポップでカラフルにアルファベット順に楽しいサーカスが繰り広げられる!】 まちにまった日曜日、クマの団長が率いる「アニマルアルファベットサーカス」がやってきました!最初は「Ant」ことアリの楽団が先頭に「Bear」ことクマの団長がやってきました! 「さあ サーカスが はじまるよ!」 お次は「Camel」ことラクダのこぶの上で「Dog」ことイヌが逆立ちを披露します。「Elephant」ことゾウが鼻から水を吹き出せば、「Frog」ことカエルと一緒に噴水ショーです。ショーは動物のアルファベット順に進みます。 「Iguana」ことイグアナと「Jaguar」ことジャガーは「ブルルン バルルン」とバイクに乗って曲芸対決! 「Mole」ことモグラと「Newt」ことイモリは空中ブランコ!モグラは「ぶるぶる」、イモリは「のりのり」etc....。こうして楽しいサーカスが続きます。さぁ最後の「Z」はどの動物がどんなフィナーレを見せてくれるのでしょう? 動物たちは全てコラージュで作られていて、紙、布、写真など様々な素材を上手に組み合わせられており、ごちゃごちゃになりそうで上手に配色や模様を配置しているので、センス良くカラフルに動物たちのイキイキとした曲芸を表現しています。 また、各動物の頭文字となるアルファベットには読み方と英語での表記と発音、日本語が記載されていて、英語に興味を持ちだした子どもたちは、楽しくアルファベットに触れることができるでしょう! 【丈太郎のひとりごと】 子どもたちは勿論のこと、大人までも楽しめる数々の作品を創ってきたtupera tupera。 その多くの作品はとてもポップでカラフルでオシャレでスタイリッシュ! 大人気の『パンダ銭湯』(絵本館)などでは、細部のディティールへの拘りをしっかりと持ちつつもポップに仕上げてしまうtupera tuperaの才能はただモノではないと思ったものです。 僕はtupera tuperaの作品をいくつも見てきて、ほとんどをコンプリートしていると思っていましたが、今作は不覚にも見逃していました。この絵本が発刊されたのは2009年。まだ僕がメルヘンハウスで働く前のことです。着実に版を重ねていることからも分かるようにtupera tuperaの「隠れた名作」ではないかと思います。 コラージュって本当に難しいのです。ただ、色々なものを切り貼りすれば良いだけでしょ?なんて思っている方、それは間違いです。しっかりとデザインの基礎を理解していないと、ただのゴチャゴチャした偽物現代アートみたいになっちゃうのです。 しかも今作はコラージュで作られた動物たちがアルファベット順に、しっかりと「サーカス」の起承転結が描かれているのがスゴイ!「アルファベット順」という縛りの中で良くぞストーリーに仕立てたものだと関心するばかり。 英語に興味を持ち出した子どもたちは「A」〜「Z」までを楽しく覚えることでしょう!大人はこのコラージュのクオリティの高さから「アート作品」としても楽しめます! 今作を開くと、どこか中東の国々を思い浮かべてしまうのは僕だけでしょうか?ポップなんだけどサイケデリックな怪しさを感じるのも魅力だと思います! まぁ、深いことは考えずに「ジャケ買い」しちゃってください!中身は期待以上だと思います。お楽しみに!