『ぼうし』
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トミー・ウンゲラー/作 田村 隆一 麻生 九美/訳 32P 評論社
【飛んで行った帽子の行方は?】
ぼうしはお金持ちの頭の上で幸せに暮らしていました。ところがある日、オープンカーで飛ばしていた時に、ぼうしは風に吹き飛ばされてしましました。そして、一文無しの退役軍人の頭に着地しました。名前はベニトと言いました。
ぼうしはベニトの手からぴょんと飛び出すと宙返りをして見せました。ベニトはぼうしは生きていると思い、ぼうしにこっちに来るように命令すると頭の上にのりました。
ベニトはお金持ちの旅行者の頭の上にバルコニーから大きな植木鉢が落ちてくるのを見ると、ぼうしはあっという間に植木鉢をキャッチして旅行者を守り、ベニトはお金やら高価なものをもらいました。ベニトはびっくり仰天です。
銅像のてっぺんにいる鳥を捕まえた人には1千万円というポスターが貼ってありました。誰もが捕まえようとしますが届きません。ベニトはぼうしに「つかまえろ!」と命令をしました。ぼうしは空高く飛んで鳥を捕まえ、ベニトは大金を手に入れました。
こんな風にぼうしは大活躍しベニトはウハウハです。ある時、青年将校が若いお母さんのご機嫌を取ろうと話をしながら太い葉巻を吸っていました。ところが、その灰は乳母車の中へ落ちていきました。乳母車は燃えてびっくりしたお母さんが手を離すと長い階段を落ちていきます。
最初からその光景を見ていたベニトは、ぼうしに水で火を消すように命令し、自分は乳母車を止めました。ベニトがホッと胸を撫で下ろしていた時、今度は馬がものすごい勢いで走ってきます。さて、ぼうしと言えば命令されることもなく、、、。
クラシカルな絵で不条理な世の中を皮肉混じりに見事に描かれています。
【丈太郎のひとりごと】
この絵本を描いたトミー・ウンゲラーは、僕が世界で一番好きな絵本『すてきな三にんぐみ』の作者でもあります。彼の作品はどれも社会に対するアンチテーゼ的な要素をユーモアに包み描かれているように思います。子どもには面白おかしく、大人にはそんなことを考えさせる大好きな作家です。
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